さそり座
忘却と想起
夜道の窓
今週のさそり座は、夜道で見かけた明かりのついた窓のごとし。あるいは、ああこんなこともあったっけと不意に忘れていた人生の一場面を思い出していくような星回り。
夜、街を歩いていてふと、明かりのついた窓が気になることがある。そしてそこには大抵、明かりとセットとなった人影があり、その身動きの気配がある。
どんな人が、どんな気持ちでいるのだろうか。
そろって楽しくやっているのか。夫婦であれば、一日の仕事を終えてやっと顔を合わせ、ほっと一息ついているかも知れない。子供たちが大きくなってしまった家ならば、夕食後にすっと子供だけがリビングを抜けて自室に入ってしまった後の静けさが漂っていることだってあるし、飼い猫だけがその中を気怠そうに窓際へと移動していくことだってあるだろう。
ふいに視界に飛び込んできた窓の景色は、まるでスクリーンに映された映画のように、赤の他人の人生なのに、どうにも身近に感じてしまったことが、誰しも一度や二度はあるのではないか。
8日にさそり座から数えて「無意識領域」を意味する12番目のてんびん座で、満月が起きていく今週のあなたもまた、さながら自分の人生を舞台裏からのぞいていくように、普段あまり思い出すこともない記憶が自然と引き出されていきやすいはず。
ギーガーの窓
例えば『エイリアン』の造形をデザインしたH・R・ギーガーは、独特の世界観を有する カルトスター的存在だったが、そのインスピレーションの源泉について「自分の夢に出てきたものを描いている」と述べていたことがある。それがプロモーション用の設定であれ真実であれ、いずれにせよ彼が隠遁生活の中で次々と作品を生み出していったことは確かだろう。
実際、ギーガーの絵を見た人の多くは、おそらくそこに強い性衝動の抑圧を感じるのではないか。彼は10代の頃に初めて異性とキスしたことで、しばらくの間絶え間ない性的興奮に襲われ、起きている間中あたまの中をエロティシズム的妄想が占めていた時期があったと語っていたが、そうした体験の記憶が夢へと変じ、後になって創作に与えた影響も大きかったはず。
今週は、孤独に自分と寄り添い向き合っていく時間の中で、時間をかけて研ぎ澄まされ、育まれるものの力を再認識していくことになるかも知れない。
今週のキーワード
想像力の扉をあける