さそり座
価値の選択への努力
病いの自覚
今週のさそり座は、中島梓の『コミュニケーション不完全症候群』のごとし。あるいは、またひとつ正しさの強制から自由になっていくような星回り。
この本はダイエット依存症の女の子だとか、オタクや腐女子など、現代社会に特有の少年少女における一群の現象を、現代社会へ過剰適応という観点から説いている本です。
作者は、若い女の子が過剰なダイエットに駆り立てられるのは、社会が求める‟いい子”像から自分が外れないためだ、と断じます。
「真面目で従順だからこそ、彼女たちは社会からのメッセージ、命令に過度に忠実にしたがう。そうして自分自身を破壊しようとすることによってだけ、彼女たちは社会に無力な復讐をとげているのである。(中略)ダイエットが女性たちに約束している手形はこうである―あなたももし、この社会で「いい子」のメンバーでいたい、社会から可愛がられる優等生でいたいのならば、私のいうことをきいて、私の価値を信じる事だ。体重は軽ければ軽いほど偉いのだ。」
私たちは、いつだって誰かに選ばれたいし、愛されたい。そうじゃない自分なんて、許せる訳がない。そんなふうに思うことを、いつかやめられる日が来るのでしょうか。
もしかしたら、いつまで経ってもそんな日は来ないかも知れません。けれど、少なくともこの本のように、自分の病いを自覚することならできるはず。
12月3日(火)に「拡大と発展」の木星が約1年ぶりに星座を移り、さそり座から数えて「選択肢の拡張」を意味する3番目のやぎ座へ入っていく今週のあなたは、硬直化しがちな‟価値”が、自分で想っているよりもっと多様で相対的なものものであることに気付いていきやすいタイミングを迎えているのだと言えるでしょう。
重力か、光か
20世紀前半の激動と戦争の時代に、苛烈な自問自答を背負って生き、34歳の若さで餓死したユダヤ人女性思想家シモーヌ・ヴェイユは『重力と恩寵』の中で、求める目的とは反対の結果をうむ努力と、たとえうまくいかないことがあっても有益な結果をうむ努力の仕方があると述べていました。
いわく、
「前者は、内心のみじめさに対する(まやかしの)否定を引き起こし、後者は、自己のありのままの姿と愛する者との間のへだたりをたえず注意させることによる」
と。
これはまさに『重力と恩寵』という問題を身をもって示したものと言えます。
というのも、彼女の言う「重力」とは、物体の重力にも似た心の惰性的で功利的な働きのことであり、それに対して、「恩寵」とは、心の単なる自然的な働きを超えたものを指し、光とも言い換えられているから。
どちらを選ぶべきか、それは今週のさそり座の問題でもあります。
今週のキーワード
選ばれるんじゃなくて、選ぶんだよ。