さそり座
ものを見るということ
目の動きと心のムーヴ
今週のさそり座は、「鳥が目をひらき桜を食べている」(鴇田智哉)という句のごとし。あるいは、ひとつの巨大な目そのものになりきっていくような星回り。
一読してまず「鳥が目をひらき」という言葉の異様さに意識が奪われる。果たして鳥が目を見開くなんてことがあるだろうか。ない!
いや、ないというか、「鳥が目をとじて桜を食べている」という事態は絶対にありえないし、その上で世界はこうでしかないんだよ、ということを作者から逆説的に伝えられているようでビビッドなんだけど、同時にすごく気持ち悪いという独特の味わいが得られる一句。
で、よく考えてみるとそもそも鳥って小さいですから、鳥の目がひらいているなと思えるには、鳥にものすごく接近しないとそう思えない訳です。
接近の動機付けとして、「えっ、花を食べてるの?」という意外性や驚きがあったであろうことが想像できるのは、その後しばらくしてだろうか。
いずれも視覚をキーに、目が開いたり、一周まわったり、寄って見たりといったムーヴが、心の動きと一致しながら目まぐるしく展開されていく様は、6日(水)に自分とは真反対のおうし座へ天王星が入っていく今週のさそり座のあなたそのものと言っていいかもしれません。
心の眼
シェイクスピアの『リア王』は、王室内の骨肉の争いがたちまち国家の規模をこえて、宇宙的な広がりを感じさせるダイナミックな展開へと進んでいく比類なき劇ですが、話の副筋であるグロスターとその子エドガーの残酷な逆境が、劇全体をじつに味わい深いものにしています。
目をくりぬかれ盲目となったグロスターは、自らが追っ手を差し向けたエドガーにそうと気付かぬうちに手を引かれつつ、次のようにつぶやくのです。
「わしには道などないのだ。だから目はいらぬ。目が見えたときにはよくつまづいたものだ」
そしてさらに続けて、こう言うのです。
「よくあることだが、ものがあれば油断する、なくなればかえってそれが強みになる。ああ、エドガー、お前は騙された愚かな父の怒りの生贄になった!生き永らえていつかお前の体に触れることができたら、そのとき、俺は言うだろう、父は目をふたたび取り戻した」
今週は心の眼を通し、安穏に生きてしまえば決して見えないようなものを見ていくことを心がけてみてください。
今週のキーワード
いつだって僕らは幻を見てしまう