さそり座
夢に夢を接ぐ
心変わりは夢変わり
今週のさそり座は、私を夢見ている夢に気付いていくような星回り。あるいは、夢の記憶が欠落している自分に、新たな夢物語をいわば「接ぎ木」していくこと。
日常から色がくすみ、憂鬱の影が小さな部屋いっぱいに差し込むようになってくると、やがて「失敗した」「自分がダメだからだ」「どうしてもっと…」といった暗く戦慄くような声が脳内に響き始めます――。
もしそんな時、「私たちは夢と同じ材料でできている」という『テンペスト』のかの有名なセリフを<私>に代入していくならば、きっと<私>は祓い清めることができないまま現実として具現化しつつある夢の代わりに、自分の愛する芸術家たちの夢を知り、さらにその中へと入っていきたいという誘惑に大いに駆られることでしょう。
悪夢の効用というのは、こうして意識に揺らぎをつくり出す点にある。
そうして未知の夢にあこがれる者が想像力の力を借りてつくりあげる身代わりの物語は、たとえ初めは貧弱な代用品に過ぎないにしても、繰り返し夢見られていくごとに、次第に目の前の現実へ「接ぎ木」のように根づいていくものだということは、昔から一部の人々にはよく知られていたように思います。
例えば、ポルトガルの詩人フェルナンド・ペソアは「現代最大の詩人とは、夢の能力を最大に備えている人物のことだろう」という一節を遺していますが、今週のあなたにおいても、不意にみずからの「夢の能力」を試してみたいという欲望が膨らんでいきそうです。
わらしべ長者
あなたは今、自分の中で社会的アイデンティティーが変わりつつあることを感じている一方で、心からの望みを達成するためには他の誰かの手引きや助けが必要だという現実に直面し、少し息苦しくなっているのかもしれませんね。
こうした状況で、ひとりでもがき続けていても何も解決しません。
物理的もしくは精神的に近くにいて、頼ることのできる相手(あるいはその逆)を共犯関係に巻き込んで、抜き差しならない状況をつくっていくこと。それもまた一種の詩作であり夢見なのではないでしょうか。
例えば「わらしべ長者」では、夢で見た観音様からの「初めに触ったものを、大事に持って旅に出ろ」というお告げを信じて旅に出て、人の手を借りつつ、次々と交換を繰り返していった結果、ついには大きな屋敷を手に入れました。
今週は自分の手に入れたいものが何なのか、そしてそれを手に入れるために何を必要としているのか、改めて見つめ直してみるといいでしょう。
今週のキーワード
「現代芸術とは夢の芸術なのだ。」フェルディナンド・ペソア