いて座
移り変わりとぶり返し
故郷の自然が浮かんでくるとき
今週のいて座は、「ふるさとは風の中なる寒椿」(入船亭扇橋)という句のごとし。あるいは、不要な思い入れはきっぱり捨てて、出会うべきものと出会っていくような星回り。
故郷を思い出して詠まれた望郷の一句だが、不思議なほどに人間臭さが捨象されている。
母親の後ろ姿を求めてやまないとか、地元の旧友たちの声を懐かしんだりというのでもなく、ただモノクロの世界にぽつりと赤い椿が置いてある。おそらく、移り変わっていく季節に照らし出されるようにして故郷の自然が浮かんできたのだろう。
変に感傷的になったり、肩に力をいれて感動的であろうとするよりも、こっちの方がよっぽど真実らしいと思わせる句だ。なんだか自然な出会いや再会というのは、そういうものなのかもしれないという気がしてくる。
今あなたは、大人になってもう幾度目かも分からない春を迎えている。ただ、だからといって「春だから」とか取ってつけたような理由で、自分の行動を決めていく必要はありません。
あくまでも、自分の中の季節の移り変わりが自然とあなたの心に映し出してくる光景を、まっすぐに見つめていきましょう。そこに必要なものがあるはずです。
三寒四温
春を迎え、そろそろ本格的に暖かくなってきたかなという日が続くと、今度は寒さがぶり返してくる、ということが何度が繰り返されます。しかしこういうことは、運気の流れにもよく起こってくることです。
ただ、もうすっかり季節が春に変わったのにも関わらず、過ぎた冬を思い出したかのように寒さが戻ってくる日があったら、それはまだ心の中で解消しきれずに残っていた‟恐れ”のせいかもしれません。
とはいえ、そういう現象を必要以上に問題視したり、重く受け取る必要はないでしょう。
環境へと適応しきれなくなった身体が、自身を調整するために風邪をひくように、きちんと熱を出してひと通り症状が落ち着くまでおとなしくしておくこと。思わず脳裏に浮かんでくる「故郷の自然」というのも、出てくること自体に必然性があるのです。
もし恐れが開いたのなら、風邪をひいたのだと思って、ひと段落するまで慌てず落ち着いて時間を取りましょう。
今週のキーワード
野口晴哉『風邪の効用』