
いて座
ドラえもんのポケットの中へ

「不死なる魂による自己想起」の実践
今週のいて座は、ブラヴァッキーの「第四の道」のごとし。あるいは、合理的推論や直接的な感覚では捉えられない世界から響いてくるものを聞いていこうとするような星回り。
現代においては時間も空間も私たちがそこに結びついて生きている、といよりは、そこから疎外されて生きているような感じ、つまり時間、空間が人間にとって無情な存在であるという感じがますますしてきていますが、近代オカルティズムの母となったブラヴァッキー夫人は、それとはまったく異なる考え方をしていて、例えば次のように述べていました。
アーカーシャ(空間)は宇宙のマトリックスであり、大いなる秘密であり、万物がそこから現れてくるところの、実存の根拠である(『シークレット・ドクトリン』)
私たちはアーカーシャを見ることはできないけれども、第四の道(古代の秘教的な伝統に由来する「高次の自己」の実現へと導く精神的な進化の教えであり「道」のこと)を歩き始めたものには、それを感じとることができるようになる。アーカーシャはその時(それを感じとることができるようになったとき)音として響き始める。音はアーカーシャの表現であり、開示である(『秘密教義』)
要するに、ブラヴァッキーにとって空間とは、空っぽな何かではなくて、力に満ちみちた実体であり、そこには宇宙的意志とも呼ぶべきものが働いている、と考えていた訳です。こうした考え方を踏まえると、空海が記憶力を高めるために「虚空蔵求聞持法」を修行したことの意味もまた分かってきます。
アーカーシャガルバ、虚空蔵を聞くとは、宇宙の意志に直接触れるための修行の意であり、それはプラトンの対話篇『メノン』において「魂がすでに学んでしまっていないようなものは、何ひとつないのである。だから、徳についても、その他いろいろな事柄についても、どんなことも、いやしくも以前に、すでに知っているものである以上、魂がそれらのものを思い出すことができるのは、別に不思議なことではない」(藤沢令夫訳)と語られているような、「不死なる魂による自己想起」の実践に他なりませんでした。
2月5日にいて座から数えて「儀式」を意味する6番目のおうし座で上弦の月(行動の危機)を迎えていく今週のあなたもまた、何らかの仕方で“宇宙的な意思疎通”をはかっていくことがテーマとなっていくでしょう。
4次元的なプロセス
例えば、量子力学の父ニールス・ボーアが原子レベルのモデルを考えていたとき、「動く数学的なモデル」を作って思案を重ねていたそうですが、20世紀に入ってから科学やデザイン、建築や芸術などさまざまな分野でこうした「動くモデル」が発明・発見のために用いられるようになってきました。
その中に「ガストロフルックス」というモデルがあります。平面だと16の花弁をもつ花を連想させる形をしているのですが、これを中心部で絞りながら球体にしていくと、二重の球が生じてきて、それがさらに内側へとたくし込まれて拡大し、もう1度、外側へと循環していきます。こうした運動は「4次元なプロセス」とも呼ばれていますが、実は生物学で「内臓化」と呼んでいるものとも酷似しているのだそうです。
「内臓化(Gastrulation)」とは、ほとんどの動物の胚発生の初期段階で見られるもので、これによって胚は分化を開始し、異なる細胞系統を確立して、背腹とか前後など体の基本軸を設定していくのだとか。つまり、生物が生物として進化していく際には必ずこの動きが必要となってくる訳で、これもまた生命原理としてのアーカーシャなのでしょう。
今週のいて座もまた、静止した現象をいじくり回すのではなく、あくまで動きのなかに現れてくるものを直観的に受け取っていくべし。
いて座の今週のキーワード
「たたみこまれて内臓化する」動き





