いて座
黄色い閃光
光の残像を求めて
今週のいて座は、『たんぽぽの黄が目に残り障子に黄』(高浜虚子)という句のごとし。あるいは、まなざしを明るく染めなおしていこうとするような星回り。
昼の太陽を見つめた後に、うす暗い室内に入ると、それまで見えていた日光が視界の中に残って見えることがあります。それと同じ残像現象が、たんぽぽをじっと見ていた後に起こったのでしょう。
春の穏やかな昼下がりに、部屋から庭を見ていたら、たんぽぽの黄色があまりに鮮やかで、思わず時間を忘れて見つめてしまっていたのかも知れません。その黄色が目に残って、視線を室内に戻したあとも、白い障子の上に、ぼんやりと黄色が浮かんでいる。いわば、たんぽぽの黄色に作者のまなざしが染められたのです。
物理現象としては残像現象は光に対してのみ起こりますが、人間の精神においては、歴史的なものであれ個人的な出来事であれ、光だけでなく闇に対しても残像現象と同じことが起こりえるはず。というより、むしろ何重にもそうした負の残像を視界のうちに引きずっているのが、多くの人が生きている主観的な風景なのだとさえ言えるように思います。
そして、そうであるからこそ、視界のはしにやっと目に留まるような、ささやかな光の残像を日々の生活の中で、少しずつでも写しとっていくことが大事になってくるのではないでしょうか。
3月20日にいて座から数えて「魂の栄養」を意味する5番目のおひつじ座で春分(太陽のおひつじ座入り)を迎えていく今週のあなたもまた、精神的な汚染から自身を守ってくれるような残像をこそ積極的に写しとっていきたいところです。
スイングバイとしての白うさぎ
この世には、機械的に反復される慣習の世界に決して囲い込まれないものがあるものです。それは何かの拍子にひょいと飛び出してきては、『不思議の国のアリス』の白うさぎのように、私たちを「その日その日をどう送ろうか」とか、「いかに安楽をキープするか」とか「何を食べ、誰と寝るか」といった反復的な悩みの外へと連れだしてくれる。
しかし同時に、そうして不意になにか見慣れないものが飛び出してくることほど、人々の不安を掻き立てる、不穏といってもいい光景もないでしょう。なにせ、これまでこれこそが現実とばかりに思っていた世界の方が幻想で、ウソっぱちで、欺瞞だらけであることに気付いてしまうかも知れないから。
けれど、そこでたじろいではいけない。キャバレーの席に座ってせっかくの演目を真面目腐って鑑賞することほど滑稽な光景というのもないでしょう。とめどなくゲラゲラ笑い転げながら、足元の「現実」がガラガラと崩れていく精神の冒険をただただ楽しめばいい。今週のいて座もまた、それくらいのつもりで思いきり普段の日常の制約からおのれを解き放っていきたいところです。
いて座の今週のキーワード
「ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん」