いて座
移り行く時代に連動していく
人間として扱われない事態に対して
今週のいて座は、レジスタンスへと加担していく運動家のごとし。あるいは、政治的(ポリティカル)な解釈を身近な人間関係や支配構造に取り入れいこうとするような星回り。
公認心理師・臨床心理士の信田さよ子は、日本の家族に働くある種の力学を的確に言い当てた言葉として政治学者・丸山眞男の「抑圧移譲」という言葉を取りあげています。
これは権力者の抑圧が下のものへ順々に発散される構造や仕組みのことで、かつては日本軍内部で行われていた上官からの過酷な暴力、私刑をともなう軍国支配への反省から生まれた言葉ですが、今やこうした構造は日本社会の隅々にまで浸透しているように感じます。
そして、こうした強者による権力行使をそのまま自分より弱い立場の者に向かって同じように権力行使してしまう抑圧移譲の対極にあるのが「レジスタンス(抵抗)」です。例えば信田は、家庭内暴力の被害者が繰り返し思い出されるフラッシュバックを避けるため、飲酒やギャンブルなどに耽溺していく行為を一つのレジスタンスとして捉えます。
レジリエンスと言ってしまうと、あたかも能力であるかのように誤解される。そうではなく、力だととらえるべきではないだろうか。(省略)このように「人間として扱われない」事態を想定すれば、「人間として」という表現にも意味が生じる。まさにレジスタンスとは、受けた衝撃に人間としてそれをどう認識し、どう対処し、強いられた変化に抗して(抵抗して)昨日と同じ日常を生きるか、他の人と同じ人間として生きるかということを表わしているのではないか。(『家族と国家は共謀する―サバイバルからレジスタンスへ―』)
12月5日にいて座から数えて「公的態度」を意味する10番目のおとめ座で下弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、「レジスタンス」の可能性をみずからの日常の中に見つけていくことがテーマなのだと言えるかもしれません。
『The Times They Are A-Changin(時代は変わる)』
ボブ・ディランの『The Times They Are A-Changin』という曲は、今週のいて座のテーマソングと言ってよいでしょう。その冒頭は次のよう。
仲間を求めるがよい/どこにいようとも/君の周りでは/流れが渦巻いてるのだから/気をつけろ/でないと溺れるぞ
もし君に/未来があるなら/ちゃんと泳ぐんだ/沈んでしまわないように/時代は動いていくのだから
そう、時代は変わる。それに先立って、私も変わっている。すべては不意に変わっていく。そしてどこかで、自ら引いた引き返すことのできないラインを思い切って飛び越えていく。そうすることで、人生において一つの時代は終わっていくのです。先の曲の歌詞の最後のフレーズは次のよう続きます。
ラインが引かれると/呪いが放たれる/足の遅いやつだって/早くなることもある
今新しいことも/明日には古くなる/秩序だって/混沌に変わる
正義だって/悪徳になる/時代は動いていくのだから
今週のいて座もまた、つねに動き続ける時代とともに「在る」ためにこそ、動いていきたいところです。
いて座の今週のキーワード
「抑圧移譲」の上で踊り倒す