いて座
家々の灯り
最終的な望み
今週のいて座は、『山よりもしづかに冬の家灯る』(井越芳子)という句のごとし。あるいは、ここのところ憑りつかれていた強迫観念から脱していこうとするような星回り。
冬の山の季語といえば「山眠る」ですが、掲句ではそうした定型的な表現が、一種の比喩として家の明かりがともっていく様子の静謐さを描写するためにごく自然に、あくまでさりげなく用いられています。
冬山は厳しい現実や過酷な環境を暗示する一方で、何人も寄せ付けない手つかずの自然であり、また人間が足を踏み入れることのできない神域でもありますが、それとは対照的に、明かりの灯った「冬の家」は人の手でつかめるくらいのささやかなしあわせや、それを見つけたり創りだしたりする能力の象徴とも言えるでしょう。
それはたくさんの人に注目されるような華やかな成功や溢れんばかりの富とは一線を画しますが、だからこそ、世の喧噪に踊らされるのに疲れ果てた人が最終的に望むようになる境地にも通底しているように思います。
今の日本人を支配している価値観は、とにかく「経済成長」ですが、掲句に詠まれたような「冬の家」の灯りを眺めていると、経済成長などなくても人生/生活は豊かになるのだとおのずと思えてくるはず。
13日にいて座から数えて「祓い」を意味する12番目のさそり座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、これまでの自分だったら見過ごしていたであろう、些細でちっぽけなしあわせにこそ最上の価値を見出していくべし。
大国幻想
日本が明治維新を機に「大国」を目指し始めた頃というのは、かつては領土の広さで表されたものが、それを獲得し維持するだけの軍事力の大きさが指標になり、さらに経済力の大きさへと取って代わられていった“力の時代”の幕開けでもありました。
しかし今や「経済で大きくなる」とか「強大な経済力で勝つ」というのはもはや旧時代的なあり方となりつつあり、この先「大きい」ということはむしろ維持運営の困難を抱えるリスク要因へと成り下がっていくのではないでしょうか。
そしてそうした流れは、どこか今のあなたにも通底しているはず。つまり、まだ残存する「もう一度経済発展の勝者の道を」という目論見に対する違和感とともに、どうしたって大きくなり続けようとする欲望にメスを入れ、需要と乖離した目標のための目標を取り下げ、身をもって“力の時代”に幕を引いていけるかどうかが問われているのではないか、と。
今週のいて座は、どこかでみずからが今そうした節目に置かれているのだと、強く実感していくことになりそうです。
いて座の今週のキーワード
心やすらぐ家路であるか