いて座
見えにくい徳性の輝き
審美眼の試金石
今週のいて座は、『豹よりも虎美しき弥生かな』(大内史現)という句のごとし。あるいは、みずからの魂の似姿をしずかに確認していくような星回り。
「弥生」は3月の旧暦時代の呼称で、新暦ではまさに百花爛漫の時期であり、そんな華やぎの中で見る猛獣はさぞかし美しいのだろうと考えてしまうのも人の常。
とはいえ、豹と虎のどちらがより美しいかと問えば、そこにはその人なりの審美眼が必ず現れてくるはず。すなわち、あざやかなまだら模様と長い手足に、しなやかな身のこなし、そしてどこか奥深い優しさを感じずにはいられない豹に軍配を上げるのか。それとも、対するものを圧倒するだろう猛々しさに、どんな肉をも引き裂くに違いない大きな爪、何よりその古典的で端正なたたずまいに親近感を覚えるか。
要はどちらにより自分の理想を重ね、いま現在呼応しているか、ということでもあるわけで、作者が後者に傾いたのは、たぶんに25歳という若さに起因するところも大きいのかも知れません。ただ、いずれにせよ、下句の「弥生かな」というじつに抑制のきいた措辞によって、一気に高まった華やぎは見事に内に秘められていきます。
同様に、15日に自分自身の星座であるいて座で下弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、鋭い直観で感じとったことほど鍛えてきた知性で包んでそっと納めていくべし。
運命の口当たり
古代ローマの格言に「すべての人は自分の運命の建築家である」というものがありますが、
これはあまりにすっきりと合理的過ぎて、なんだか保険の営業マンが提示する人生モデルみたいだなと思う一方で、フランシス・ベーコンが運命について次のように書いている一節は、実に味わい深いものがあります。
運命の歩みは、空の銀河に似ている。銀河は多くの小さな星の集まりあるいは塊である。小さな星は散在していてよく見えないが、一緒になって光っている。同様に、多くの小さな、見えにくい徳性が集まって人々を仕合わせにするのである。
今週のいて座は、目を凝らして注意深く観察することで、自分の運命を他のものと見分けていくことができるかも知れません。そして、あなたはそれについて誰かに語りたくなる。
ただし、語れば語るほど、口内に広がるのは切なさを含んだ苦味かも知れません。運命というものは、けっして口当たりがいいものではないから。それでも、出来得る限りもっと話して、意見を聞いて、解りあいたい。そんな気持ちに駆られていく時です。
いて座の今週のキーワード
ユーモアとシリアスのはざまで