いて座
ああ潮の流れのように
食事風景が映し出すもの
今週のいて座は、『磯野家はみんなで正座豆ごはん』(福永法弘)という句のごとし。あるいは、自身の依って立つ世代的な意識の在りようが浮き彫りになっていくような星回り。
「豆ごはん」とは、グリーンピースやさやえんどうの実で作った炊き込みご飯のことで、青青とした風味がやさしく味わえる旬の料理です。
今では家庭で食卓を囲むと言えば、椅子とテーブルが出てくるのが普通ですが、1950年代生まれの作者の子ども時代はおそらくまだ正座で食卓についていたのでしょう。
そして1969年から放映されている『サザエさん』の何気ないワンシーンもまた、そんなかつては確かに存在したものの、すでに失われてしまった光景を現在もまた映り出し続けているわけですが、現代の子どもたちはそんなサザエさんの食事風景を見てどう感じているのでしょうか。
掲句は、今では宙に浮いてしまった「日本人らしさ」だとか「日本的な精神の具体的な現われ」をさりげなく切り出してみせているだけでなく、そこに横たわる世代間ギャップや時代意識の移ろいを、ほのかに薫る初夏の風味のごとく漂わせることに成功しています。
同様に、23日にいて座から数えて「原点」を意味する4番目のうお座で下弦の月(意識の危機)を迎えていく今週のあなたもまた、複数の潮流が渦巻く現実において自分がその一部となって身を浸している時代意識をできるだけ明確に意識していきたいところです。
記憶との共生、そして記憶同士の共生
どんな人の中にも、自分を支え続けてくれている記憶というものがあります。ただ、それは大人になると滅多なことでは思い出せなくなり、普段の日常でも影に潜んで、まるでいない振りをするようになります。
けれど、それがどんなに鋭い痛みを伴う出来事であれ、思い出すのも苦しい過去であれ、その「記憶」なしには現在の自分はありえないのだと感じている限り、その苦しみの記憶はあなたの側からけっして離れていくことはなく、ときどき不意に思い出しては、そうした「過去」と共生していかなければなりません。
もちろん、記憶はたえず塗り替えられていくものでもありますが、それも厳密に言えば、古い記憶と新たな記憶の同居に他ならず、2世帯で同じ食卓を囲んでいる磯野家の距離感でそこに居てもつらくないように感じるくらいまでには許容し合わねばならぬのです。
その意味で、今週のいて座は、そんな風にしてまたひとつ、ささやかながらみずからのよって立つ現実の複数性を受け入れていくことがテーマとなっていくのだと言えます。
いて座の今週のキーワード
振り返ればはるか遠くふるさとが見える