いて座
ゆるんでいっぱい
ぎんなんのさみどりふたつ
今週のいて座は、「ぎんなんのさみどりふたつ消さず酌む」(堀葦男)という句のごとし。あるいは、繊細な調整を重ねていくなかで自分を大切にする感覚を取り戻していくような星回り。
銀杏の実をつまみに晩酌しているのでしょう。ただ、その鮮やかな緑色をした実の美しさに、残らず平らげて眺められなくなるのが惜しくなり、最後の二粒をのこして飲み続けている。
なんということはない情景ではありますが、自分の前から失われつつある何か大切なものを残したいという想いや、その色合いや感触を際立たせるためにあえてひらがな表記を施した創意工夫などは、今のいて座の人たちの心理や必要な行動とも重なるところが大きいのではないでしょうか。
よい酒を飲んで気持ちよく酔うためには、そうした勘所の見極めと、失いたくないものを美しく表現するためのひと工夫がどうしたって不可欠になってきますし、それがどれだけささやかで個人的なものであれ、そうした繊細な調整を日々少しずつ重ねていくことが今のいて座には大切であるように思います。
11月5日にいて座から数えて「気の調整」を意味する12番目のさそり座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、誰も気にも留めないようなディティールにこそ自身の命運がかかっているのだと思い定めてみるといいかも知れません。
「あきらめる」と「手放す」の違い
人間関係であれ、仕事やキャリアであれ、もし何か特定の悩みや葛藤を解決したいなら、最終的にその成否は当の「それ」をいったん手放すことができるかどうかに掛かっています。
ただし、それは単に中途半端な状態で何かを投げ出し、放棄せよということとはまったく異なります。むしろそういう形で何かを「あきらめる」と、かえって執着を生み、後々まで引きずることになってしまう。あきらめることと「手放す」ことは別の話なのです。
さながら、晩秋にカエデやイチョウなど、落葉樹の葉が黄や赤に変わっていくように、自然の大きな流れに「それ」を明け渡していくこと。そうして、無常の中に「それ」と自分とを同時に浮かべ、そっと見守っていくこと。それこそ、掲句の銀杏での一杯に含まれていたニュアンスでもあったように思います。
今週のいて座は、すべてが変わりつつある最中においてこそ、自分もまた成熟し洗練されていくのだという実感を、少なからず得ていくことができるはず。
いて座の今週のキーワード
緩んでなければ繊細な調整はできない