いて座
創造的な追求とは
こちらは9月13日週の占いです。9月20日週の占いは諸事情により公開を遅らせていただきます。申し訳ございません。
多和田葉子の場合
今週のいて座は、多和田葉子の『エクソフォニー』の一節のごとし。あるいは、単なる「真似」ではなく自分なりの「創造」を選択していこうとするような星回り。
ドイツに移住し長年にわたりドイツ語と日本語の両方で書かれた小説や詩を発表し続けてきた作家の多和田葉子は、母語の外に出た状態をさす『エクソフォニー』というエッセイ集の中に収録された「声をもとめて」という文章の中で、次のような体験談について書いています。
先日、ハノーバーで知り合ったあるソプラノのオペラ歌手に話によると、彼女はプロになってからもう何年もたっているが、時どき、自分の発声を外から見てくれる先生のところに行くのだそうだ。歌っているうちに前にはなかった新しい癖が出てくる。わたしも声を出していて、似たような経験をした。これまで苦労なくうまくできていたことが急にできなくなったり、せっかく学んだことが歪んでいくこともあるし、これまでとてもできそうにないように思えたことが、いつの間にかできるようになっていたりもする。二つの言語が頭の中にある場合は特に、両者のバランスが安定しないので、発せられる音の体系が絶えず変化しているのかもしれない。
つまり、学習の集積というのはなまりや癖のなくして安定させる方向にではなく、むしろそれらを深め、創造的に追求して変化し続けていく方向に作用していくということ。
14日に自分自身の星座であるいて座で上弦の月(行動の危機)を迎えていく今週のあなたもまた、自分だけの「声をもとめて」いくことを大切にしていくべし。
少年マルコの場合
『母をたずねて三千里』というアニメをご存知でしょうか。1880年代のイタリアのジェノバに暮らす少年マルコが、アルゼンチンのブエノスアイレスへ出稼ぎにいったまま音信不通となった母を訪ねるために旅に出る物語なのですが、彼の移動した距離が尋常ではないのです。
1里が約4キロなので、三千里だと1万2000キロ。稚内から屋久島までが約3000キロなので、約2往復分の距離を9歳の子供が船と歩きで旅する訳ですから、もう空前絶後の大巡礼です。
しかも主人公のマルコは「元気で働き者だが、頑固で気分屋の少年。すぐに思い詰める癖があり、悲観的に考えてしまう」のだそうです。こういう性格で大人だったら相当癖が強そうですね。でもそういう子だったからこそ、1万2000キロの踏破が可能だったのかも知れませんし、そこまでしなければ素直になれなかったのかも知れません。
今週のいて座もまた、それくらいのスケール感を目指していきたいところです。
いて座の今週のキーワード
思い込みを打ち破る旅