いて座
破れ目きたる
生きていれば
今週のいて座は、小沼丹の『十三日の金曜日』のごとし。あるいは、いつの間にか失われていたすき間や余白がそっと差し込まれていくような星回り。
文鳥の記憶をめぐるこの短い小説では、主人公は或る日戦死したはずの友人を見かけ声をかけたら手を振ってくれたものの、人に確かめたらもう死んだと言われたことを思い出します。
不思議なものだと出した足が愛鳥を死なせ、午後から学校へ出勤し、電車に揺られていれば風呂敷包みを頭に落とされ、今日は十三日の金曜日だと話す声がする。着けば、上着に財布を入れ忘れた妻への悪口が外へ漏れて人を驚かせ、そこで話は唐突に終わります。
振り返ってみれば、文鳥という言葉一つでて来ません。それに、いかにも小説のためと言わんばかりの、取って付けたような移動があるだけの小説で、ここでは何かが破れています。破れているのは現在や過去といった時制でしょうか、それとも自他の境界線でしょうか、あるいは虚構と現実の区別でしょうか。
生きていれば、そういうこともある。今週の金曜日は14日ですが、その代わりに12日には一切が暗闇に沈む新月があります。新月もまたひとつの破れ目と言えるでしょう。
12日にいて座から数えて「厭悪」を意味する6番目のおうし座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、不意に差し込まれてくるものを流すのではなく受け止めていくべし。
運気の管理
現代人の日常は、どこか長距離自由形の水泳競技の様子に似ています。ルール上は思い思いの泳ぎ方が許されているはずなのに、気付けば周囲はみんなスピードの出るクロールばかり。そんな中、少しでもラクな息継ぎを模索したり、体力を消耗させずに泳ぐコツを身につけつつ、前進前身の日々を送っていく。
しかし長い距離を泳いでいると、どうしても自分でも気付かないうちに次第にフォームは崩れ、無駄な動きが増えていき、やがて息継ぎのポイントもずれたり、足がつったり、溺れる寸前までいってしまうことがあります。
そういう意味で今週のいて座は、レースの途中にいったんコックピットに入っていつの間にか崩れてきたフォームを見直したり、乱れた息継ぎでは足りなくなっていた酸素を肺いっぱいに取り込んでみたりといった、いわば「運気の管理」期間。
特に、最近なんとなくダルいなとか、パッとしない、ついてないと感じている人にとって、今週は自身の不運体質を引き締め直すのにはちょうどいいタイミングとなるはず。
今週のキーワード
呼吸を整える