いて座
速い思考から遅い思考へ
思考をトーンダウンさせる訓練
今週のいて座は、「考える遅さが青葉と照り合って」(谷佳紀)という句のごとし。すなわち、条件反射的なリアクションを解除していくような星回り。
一読して「速さ」じゃないんかい!とツッコミを入れたくなった人は、まずは落ち着いて窓をあけ、深呼吸でもしてみましょう。
そう、この句は「速さ」じゃないからいいんです。考えが速いというのは、即座に単純な判断を下せるよう脳が常にスイッチオン状態になっているということであって、そこでの「速さ」とは省エネのためのトリックなのであり、便利な反面、認知的バイアスがかかったり、自分の経験の範囲内で処理する安易な結論を下しがちなのだとも言えます。
一方、遅い思考とは、いったん自動化された判断を無条件で信用せず、何か引っかかるな、と違和感の原因を突き止めたり、たくさんの情報の中から重要な情報を選別したりする時に発動される、とても集中力を使うプロセスなのです。
掲句の場合は、それは「青葉と照り合って」いるという外界の状況下に置かれることで発動しました。青葉若葉が初夏の日差しに鮮やかに照らし出され、光が乱反射している光景にハッと息をのみ、あるいは、失われていた記憶の断片がよぎったのかも知れません。
5月4日にいて座から数えて「コミュニケーション」を意味する3番目のみずがめ座で下弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、思考の速度を一時的にゆるめるということを意識的に心がけてみるといいでしょう。
何かが起こりそうな気配を捉える
現代社会に暮らす私たちは、同じようなことばかり起こる日常の連続をごくごく平凡なことだとか、代わり映えしない退屈なことと思いすぎる傾向があります。そこで、何か劇的な変化を求めてついつい変わったことをして有名になろうとしたり、とりあえず海外へ旅に行ってみたり、出会いを求めたり、家を変えたり、酔っ払らおうとしたりする。
けれど、何かが起こりそうな気配の発生してくる震源地というのは、非日常ではなく、むしろ日常の中に埋没して在るものです。一見何も起こらない‟閑静な”シーンにこそ、目を向けアンテナを立てるべき対象は潜んでいる。例えば、
あの三流の付き人を演じているのは、一流の役者かも知れない
といった、「ひょっとしたら」の感覚。それが幾度か重なり、「まさか」の渦となって高揚し始めてきたとき、現実はあっけなくひっくり返り、スッとかすかな消息を残してどこかへ消えてしまったりする。今週のいて座は、そうした気配にぜひとも敏感になって、「遅い思考」を巡らせていきたいところです。
今週のキーワード
気配の震源地