いて座
ほどかれた胸のカタルシス
思い込みのもつれとして恋
今週のいて座は、もつれた糸を解いていくよう。あるいは、思い込みを冷ましてこじれた文脈を少しでも糺(ただ)していこうとするような星回り。
「変」の旧字体に「變」という字があり、漢字語源辞典によれば、上部の「䜌」はもつれた糸(絲)を分けようとする様を表わし、下部の「攴」は不安定で変わりやすい様を表わしており、そしてこれと同じ構成の字に「戀」があります。
つまり、「戀(恋)」とは、二本のもつれた糸が一つの言葉をはさんで、ちょっとしたことで白が黒になったり、善が悪になったりとするような事態を言うのではないでしょうか。
なぜそうなるのかは、もちろん個々の場合によりますが、一方の糸から出た言葉が他方にはひっくり返って伝わっていく。いったんもつれると解くのは容易ではなく、やりとりをすればするほど、互いの思い込みに輪がかかり、最終的にこころがすっかり裏返ってしまう。
では、言葉などない方がいいのか。然り、なしでも済むのなら、ないに越したことはないでしょう。例えば、痴情のもつれで相手に何か言われたとしても、黙って相手を見つめるだけでいい。言いたいことを言わせておいて、最後に横を向いて煙草の煙を一吹きするか、そっと肩に手をおいて引き寄せればいい。
3月6日に自分自身の星座であるいて座で下弦の月(意識の危機)を迎えていく今週のあなたは、何と向かえど相手を変えようとするのではなく、まず自分自身を変えることで「戀」をほどいていくといいでしょう。
切なさと感情の強度
例えば、いにしえの時代の旅人にとって、旅とはこれまでの日常や暮らしをともにしてきた人との一時的な別れであるだけでなく、もう二度と再会できないかも知れないという"決定的な断絶”を意味していました。だからこそ旅立ちに際しての別れの挨拶は「切ない」ものであり、そこには確かなカタルシスがあった訳です。
ひるがえって、再会の機会どころかLineやSNSを通じていつどこにいても直接コンタクトを取れるようになってしまった現代社会では、目の前の誰かと「もう二度と会えないかも知れない」といったいじらしい緊張感は極限までゆるんでしまっていますし、それに応じて「感情の強度」もますます薄まってしまっているように思います。
もう二度と会うことはないかも知れない。だからこそ、過去でも未来でもない、今ここの一点に集中する。そして、伝えるべき思いがあれば、それを言葉にして伝えていく。糸と糸の結びつきが完全にほどけてしまう前に…。
今週のいて座は、そうした切なさの感覚を大切に、一語一語を紡いていってほしいところです。
今週のキーワード
一期一会