いて座
終わりの想像
舞台はすすむ
今週のいて座は、結末のないお芝居を演じつつも、自ら結末を書き足していくような星回り。あるいは、リアリティーの網目によく目をこらし、能動的な想像力によって問題を内的に整理分類していくこと。
いい映画の条件とは一体何でしょうか?
監督の世界観、俳優の演技力、脚本の出来など、いろいろな要素があるでしょう。しかし、また観たいと思わせる映画に共通しているのは、決まって終わり方の素晴らしさです。
いくら展開が愉快なものであろうと、それが延々と続けば冗長になってしまいますし、感動的な愛のストーリーも終わり方を間違えれば途端に白けてしまう。物語には終わりがあり、まだ終わってほしくないと思っているからこそ、その前の時間が輝いて見えてくるのです。
自殺した文豪・芥川龍之介は
「君は自然の美しいのを愛し、しかも自殺しようとする僕の矛盾を笑ふであらう。けれども自然の美しいのは、僕の最期の目に映るからである」
『或る旧友へ送る手紙』
と書いていましたが、今週は居合わせた相手との別れをそっと頭の片隅で思い描きつつ、いま目の前のやり取りを楽しんでいくといいでしょう。
終わりが想像できない相手
相手が人間で物であれ、実際に対象との距離がつまることによって初めて、真の姿やリアルな生の実態は見えてくるもの。けれど、そうまでして肉迫したいと思わせてくれる対象というのは稀で、たいてい面倒になってしまったり、関心が薄れてしまってEndマークを迎えるはずです。
逆に言えば、腐れ縁のように、なぜかこだわってしまって容易に終わりが想像できない相手というのは、どこかであなたの側から肉迫されるのを待っているのかもしれません。
真に手を伸ばすべき対象は、意外と身の周りに転がっているものです。そんなことも今週は改めて胸にとめておきましょう。
今週のキーワード
終わるタイミングとエンドロールの内容