いて座
とりあえず歩き出すこと
欠損の自覚と分離としての出発
今週のいて座は、英雄神話の3ステップのごとし。あるいは、その最初の1ステップ目をまさに始めていかんとするような星回り。
アメリカの神話学者ジョセフ・キャンベルは世界中の英雄伝説を調べあげた上で、大半の英雄神話に共通するひとつの「物語のパターン」を突き止めました。
それが「セパレーション(分離と出発)」、「イニシエーション(試練)」、そして「リターン(帰還)」という三段階。
日本人にもなじみ深いスターウォーズシリーズだけでなく、桃太郎や『男はつらいよ』なども、まず予期していなかった意外な出発点と未知の国への旅立ち&別れがあり、その途中でさまざまな試練に遭い、仲間やヒントを得ながらなんとかそれを乗り越えると、今度はその国に留まることを勧められ、しかし最後には故郷の国へと戻っていくという物語パターンを持っているのです。
もちろん、これは大まかな区分けであり、もう少し詳しく8つの段階に分ける見方もあるのですが、今のいて座の場合、特に最初の「セパレーション」において既存の文脈から切り離されていくステップと現在の自分の置かれている状況とを照らし合わせてみるといいでしょう。
8月4日にいて座から数えて「冒険的行動」を意味する3番目のみずがめ座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、自分がいつの間にか“境界線”を超えつつあること気が付いていくかも知れません。
コスプレの延長線上としての旅
例えば江戸時代の俳聖・松尾芭蕉がその人生最後の旅について記した『おくのほそ道』は、単なるプライベートな旅日記ではなく、武家すなわち徳川家を呪詛の対象とし、国家を揺るがす怨霊として恐れられていた「源義経の霊」の鎮魂を使命(ミッション)とする一種の「ヒーローズ・ジャーニー(英雄の旅)」であったことはよく知られていることです。
とはいえ、いくら旅慣れていた芭蕉としても、「そんなこと言われたって、どうやってやったらいいんだ」というのが本音だったのではないでしょうか。しかし、彼には偉大なお手本がありました。平安末期から鎌倉時代に活躍した西行(さいぎょう)法師です。漂泊の吟遊詩人であった西行は、天皇家を呪詛の対象とする日本史上最強の怨霊とされる「崇徳院(すとくいん)の霊」の鎮魂を命ぜられ、見事に使命を遂げていました。
もちろん、芭蕉の時代から数えて西行は500年前の人であり、私たちが想像する以上に遠い過去の人物だったはずです。いわば、訳の分からないうちに、見よう見まねで始めてみたというのが、『おくのほそ道』の実際だったのでした。
そして今週のいて座にとっても、そうした「見よう見まね」の精神をどれだけ発揮できるかは重要な分水嶺となっていくはずです。
今週のキーワード
いかに最初の境界線を超えていけるか