いて座
平凡よりもっと低く、徹底的に
詩人の魂
今週のいて座は、詩人の魂を召喚していくような星回り。あるいは、人生で陥りがちな「平凡な当然さ」を打ち破ることと、恥をじっと見つめていくこと。
詩人はなぜ詩を書くのか。 それに対する最も説得力のある鍵は「恥」の感情でしょう。つまり、ぬぐっても落ちきらない不快な傷跡だから、言葉で飾って安堵を求める。
だから詩人の書き上げる詩の透明度とは、人生の汚染度であり、珠玉の数は恥の数に他ならないのだと言えます。
恥の上に恥を重ね、それをずるずると引きずりつつ、数珠のように繋ぎあわせながら、未練がましくそれを首に巻いて歩いていく。
……と、抽象的に書き出せば上等に聞こえるが、ようは喧嘩する度胸もなく笑ってごまかしたり、人を振り回しておいて悪気はないとうそぶいて最後は逃げてしまったりと、私たちの誰しもが持ち得るような、およそ平凡な痛みに貫かれているのが詩人の魂なのです。
恥があふれにあふれて、詩人の掌からこぼれ落ちたとき、それが砂金のようにきらめく詩篇となっていく訳です。今週のあなたも、そんな瞬間を迎えていけるかもしれません。
オルテガの省察
スペインの思想家オルテガは『ドンキホーテをめぐる省察』の中で
「私とは、私と私の環境である。したがって私がもし私の環境を救わなければ、私自身は救われないことになる」
と述べていますが、これは詩人の心境をきわめてニュートラルに描写したものと言えるでしょう。
「circumistance」という言葉は、「周りに立つ」という動詞の名詞形で、そこでは環境は寡黙に、しかし顧みられることを熱望しながら、私の周りに立っている訳です。
オルテガはさらにこう続けます。
「人間は、自分を取り囲む環境について十分な認識を得たとき、その能力の最大限を発揮する」
つまり、詩人は恥を原動力に、自身の能力を発揮したのです。それに最大限の名誉が与えられるのですから、人間というのは徹頭徹尾、皮肉な存在ですね。でも、だからこそ愛おしいのだと思います。
今週のキーワード
恥を砂金に