いて座
「足りない」の美学
「大きな道徳」と「小さな道徳」
今週のいて座の星回りは、「ミニマ・モラリア」への回帰。あるいは、大言壮語に寄り添う暗い影に、じっと視線を投げかけていくこと。
アリストテレス以来、西洋における知が目指してきたのは「全知」という神の世界に向かって、まだ自分たちが知り得ず、したがって自然をコントロールできない能力の不足を埋めて埋めて埋めまくるというものでした。
それこそが人が正しく美しく存在するための道であると信じられてきた訳ですが、そうした「大きな道徳」や「べき論」がある一方で、例えば日本では昔から「足りない」ことや「小さい」こと、「乱れている」こと、「不完全である」ことにこそ重要であり、美しんだという美学や倫理学も存在してきました。
そしておそらく、今のいて座の人たちにとって決定的な指針を与えてくれるのは後者の系譜の知、すなわちニュートリノのような微細な物質やほんの瑣末の事実の振る舞いに着目していくような「ミニマ・モラリア(小さな道徳)」の方でしょう。
30日(金)にいて座から数えて「向き合うべき問題や責任」を意味する10番目のおとめ座で新月を迎えていく今週は、さながら外れていた眼鏡をかけ直した時のように、いつの間にか見失っていた大事な「忘れ物」に気付いていくような瞬間が訪れるかもしれません。
「渦」に翻弄されるちっぽけな存在として
例えば、植物の葉っぱだったり、小さな虫のような些細な存在にも命はあるわけで、そうした普段見過ごしがちちっぽけな存在に焦点を合わせていると、自分もまた文明や社会という巨大な渦に吸い込まれ、巻き込まれては翻弄されている1つの小さな命のように思えてくる時があります。
あるいは、どれだけ私たちが手を尽くして自分の人生から失敗や無意味をなくそうとして努めても、「お忘れじゃありませんか?」とばかりにそれらは人生に忍び込んでくる。
けれどその一方で、私たちはそうした自分の弱さや卑しさ、無力さを思い知りたい。世界を低いところから見上げていきたいんです。
そして、その上でこそ、自分が誰で、何を考え、何ができ、何を成し遂げようとしているのか。また、何を為さねばならないのかが見えてくる。
その意味で、うだるような残暑の「渦」の中で、翻弄される命の手ごたえを確かめつつ、自分に残された限りある余生を生きる動機付けを再確認していくこと。それが今週の星回りの核心なのだと言えそうです。
今週のキーワード
忘れものを思い出す