いて座
地に足をつけて生きるために
八雲と松江
今週のいて座は、松江に根をもった小泉八雲のごとし。あるいは、自分自身の魂に資するものへと、しっかりと根を張っていくような星回り。
出生名はパトリック・ラフカディオ・ハーン。
アイルランド人の父とアラブ系の血を引くギリシャ人の母との間に生まれた八雲は、生涯を通じてギリシャからアイルランド、フランス、アメリカ合衆国、西インド諸島と浮草のように放浪を続け、「小泉八雲」という名を得た日本をその終焉の地としました。
中でも、島根県の松江は八雲にとって特に思い入れの深い土地であり、おそらくそこで彼は自分の身体のなかに流れる何代にもわたる物語を感じたのだと思います(占星術的に言えば、トランスサタニアンが感応したのでしょう)。
松江は、水木しげるさんの出身地である境港や、出雲大社からもほど近く、封じられた神であるとか、動かしちゃいけない石なんかが実際にあって、『古事記』に記された神話的な雰囲気が濃厚に残っている土地です。
八雲がアイルランドで避暑地として滞在していたトラモアという古い海辺の町に、とても景観が似ていたのだそうです。
だからこそ、彼は松江に根を張る決断ができたし(日本人の妻と結婚)、「小泉八雲」になれたのではないか。そんな風に思うのです。
8月1日(木)にいて座から数えて「捧げること」を意味する9番目のしし座で新月を迎えていく今週は、ただなんとなくこの世を漂うのではなく、しっかりと地に足をつけて生きていく ことを改めて意識して過ごしていきたいところです。
敗者の記憶と繋がっていく
土地の記憶というのは、しばしばそこに眠る敗者の記憶が強く作用しているように感じることがあります。
そして、そこに訪れた人が、自分は日の当たらない世界に属し、数々の挫折の末にそれでも生き永らえている「敗者」であるという自覚を持っているとき、自然とそうした敗者の記憶と感応し、土地に根を張っていくことができるのかもしれません。
ただ、どうしても「敗者」と言ってしまうと、聞こえが悪いというか、積極的に同調したいとは思わないでしょう。
しかし、敗者というのは時の運によって、その時たまたま思いを現実化できなかった人たちのことであり、それを受け継ぐということは、彼らの後押しを受けるということでもあるのです。
むしろ、どこにも勝者がいないようなゲームに延々と参加させられているような昨今の時代状況においては、そうした繋がりのなかで生きていくことの方が、むしろきわめて自然体に近いのではないか。そんな風にも思います。
今週のキーワード
過去と現在の二重写し