いて座
旅の岐路に立つ
芭蕉と白河の関
今週のいて座は、「風流や初めや奥の田植歌」(松尾芭蕉)という句のごとし。あるいは、目に見えない「風」と親しみ、味方につけていくような星回り。
句意は「みちのくに入って初めての風流として、田植え歌を聞いたことだよ」といったところでしょうか。
この句は東北を旅した体験に基づいて書かれた『おくのほそ道』に収録されているもので、都からみちのくへと通じる要衝の地の近く、現在の福島県須賀川市で詠まれました。
東京を出発してから様々な苦労を経て、ようやくみちのくの入口に辿りついたところで、自身のライフワークである俳諧とも新たな気持ちで取り組みたい、ひなびた田舎の田植え歌を聞いたことをそのきっかけとしたい、そういう芭蕉の思いが含まれているのだと思います。
同様に、てんびん座で新月を迎えていく今週は、あなたにとってもまた、長い長い旅路で越えていくべき幾つかの関門のひとつを超えていくことになるかもしれません。
しかし、単にそれで終わりにするのではなく、自身の旅を支えてくれる身近な人々に真心を向けていく良い機会にしていきたいところ。
「風流」ということ
人はよく浮世離れした人間のことを「あいつは風流な奴だなあ」と揶揄するニュアンスを込めて言ったりするものですが、もともと「風流」とは先人の遺風を継ぐという意味だったそうです。
それが先人の余裕ある暮らしぶりをたたえるということから、次第に好きに遊ぶこと、すなわち侘び寂びなどの精神性の豊かさを愛する心をもつことを「風流」というようになっていきました。
けれども、ひとり風流に徹するということはなかなかできるものではありません。失敗することは少なくないですし、それで他人に迷惑をかけることもしばしばでしょう。
それでも、なんとか自分なりに大切にすべきものを大切にできていれば、「あいつは風流に生きた奴だった」と、それなりに称賛をもって迎えられるようになるものですし、それができなければ、自分勝手な“道楽者”の烙印を押されていく訳です。
あなたはいずれかの結末を迎えることになっていくのか。今週はそんな分かれ道に立ったつもりになって、我が身の振り方を考えていくといいでしょう。
今週のキーワード
先人の遺風を継ぐ