うお座
時の流れに乗せて
夢の笹舟
今週のうお座は、「笹舟を水鉄砲で送りだす」(つぶやく堂やんま)という句のごとし。すなわち、思いをのせた「笹舟」が転覆しないよう、送り出していくような星回り。
季節はちょうど正反対ですが、七夕の頃になると、近所の子らで集まっては誰に言うともなく笹舟づくりに興じていた記憶があります。子どもの作るものだから、舟は大きかったり小さかったり、中にはひどく形がゆがんだ舟や、笹がほどけかかってそのまま川に沈んでしまう舟もある。
けれど、どの笹舟も皆それぞれに、どこからか夢を運んできては、代わりに嫌な思いを遠くへ捨てに行ってくれるような、そんな気がしていました。
そんな笹舟を、かつて作者も子供心ながらに、水鉄砲でまともに撃って転覆させるのは忍びないと感じたのでしょう。すこし後ろの水面を撃つことで、「送り出す」ことにした。
今週のあなたもまた、みずからの思いの丈を「笹舟」へ向けて、一度ならず何度も撃っていくことでしょう。
狂わなければ…
鎌倉時代に生きた明恵上人(みょうえしょうにん)というお坊さんのエピソードには変わったものが多いのですが、中でも好きなのは、かつて草庵を結んでいた島を懐かしんで手紙を書いた話。
島の人にではなく、島に手紙を出して弟子に届けさせたんです。書き出しは「しばらくご無沙汰したが、お変わりないか」。
明恵上人はその手紙の中で、物いわぬ相手に手紙を出せば、世間から物狂いと見られるかも知れないと思い、これまで手紙を出すのをためらっていたと事情を説明しつつも、しょせん物狂わしく思えないような相手なら友だちじゃないよね、なんて書いています。
きっと明恵上人にとって、その「島」とは子供にとっての「笹舟」に近いものだったのかもしれません。彼は『夢日記』を遺した人物としても知られており、文字通り夢に狂った人でしたが、それは現実以上に現実的でなまなましく彼を支えてくれたものだったのでしょう。
狂っていてもいいのです。必要な「送りだし」をしていってください。
今週のキーワード
手紙を出す