うお座
ごくしぜんな着地点
混乱のさ中で
今週のうお座は、『秋灯や夫婦互(かたみ)に無き如く』(高浜虚子)という句のごとし。あるいは、日常的でごく平凡な幸福としての家族と性愛を追求していくような星回り。
おそらくは長年連れ添った夫婦が、秋の夜一つ灯りの下にいるのでしょう。そして、おたがい空気ような存在だと感じて「無き如く」感じることが、逆に存在確認になっているのだと言うのです。
「水を得た魚のよう」とも言えますが、作者が思い浮かべていたのはもっと平凡極まるような光景なのでしょう。そして、そういう平凡さをごく自然におのれの一部として描いたみせたところが、掲句の非凡さなのかも知れません。
よく不幸な家庭のあり方は多種多様な一方で、幸福な家庭というのはみな一様であるということが言われますが、この句の夫婦は後者の典型的なケースであり、そういう夫婦が醸しだしている特有の空気感を一言でずばり言い表しています。
しかし、有名人の不倫報道が絶え間なくニュースになり続けていたり、マッチングアプリ利用が当り前となりホストクラブが軒並み売上記録を伸ばしている昨今の日本社会においては、大した宗教的な信仰も持たずに現代の日本人が、恋愛感情をベースとした一夫一妻制度のみを絶対的かつ最良の制度と見なし、唯一無二のパートナーシップの在り方であると頑なに信じ込んでいるかと言えば、それはずいぶん怪しいところです。実際のところ、私たちは家庭や性愛の規範意識に関してかなり混乱しているのではないでしょうか。
その意味で、10月3日にうお座から数えて「絆」を意味する8番目のてんびん座で新月(種まき)を迎えていく今週のあなたは、どんな家庭ないし性愛の形が自分にとって最も無理がないと感じられるのか、改めて浮き彫りにしていくことがテーマとなっていきそうです。
表裏一体としてのゼウスとヘラ
ギリシャ神話の主神(神々の王)であり天候を司る神ゼウスは、今日ではその業績よりも、どちらかというとその見境いのない浮気癖の方で有名かも知れません。
大恋愛のすえに結婚したにも関わらず、結婚直後から浮気に走り、その後も相手が神であろうが人間であろうが、女性だろうが少年だろうが、手を変え品を変え、動物や相手の旦那の姿に変身してでも浮気し続け、その度に妻を怒らせ、嫉妬させ、傷つけあい、騙しあったゼウスは現代の道徳観からすれば間違いなく非難の的になるはずです。
しかし2人はそれでも別れることなくそうした関係を続けました。その気になればさっさと別れて心安らげる関係を求めればいいものを、なぜそうしなかったのでしょうか。
それはおそらく、ゼウスが創意工夫の権化であり、変幻自在に姿かたちを変え、絶えず自分の理想を追い求め、世俗のルールやしがらみをもろともせずに、自由に振る舞い続けるその姿が、強烈な想像力のシンボルであり、家庭と家族の神として、世俗の束縛やお堅い社会構造のシンボルであった女神ヘラと表裏一体の関係にあったからではないでしょうか。
そして今週のうお座もまた、そうしたヘラからゼウスの絶妙な表裏関係からはかけ離れた、どこか型にはまってしまっている自分を崩していこうとしているのだと言えます。
うお座の今週のキーワード
動的平衡