うお座
この世界の片隅で
それがいちばん楽しいことだから
今週のうお座は、晩年のオキーフにおける絵を描くことの位置づけのごとし。あるいは、雑然とした自分の生活をつらぬく糸を紡いだり、織り込んだりしていくような星回り。
「私は夜明けに起きるのが好きなの」。20世紀アメリカを代表する女性画家ジョージア・オキーフは、1966年、79歳当時に行われたインタビューにおいてそう答えています。
60を越えてから100歳近くで亡くなるまで、ニューメキシコ州の砂漠に住み続けたオキーフは、早朝に30分の散歩をしてから7時に朝食をとり、アトリエへ行って正午の昼食をのぞいては一日中仕事をし、16時半に軽い夕食をすませて、たっぷりと大自然の中をドライブをしてから寝るというスケジュールを好んだと言います。ただその一方で、
絵を描かない日は、生きていくためにしなければいけないと思うことを、あわただしく片付ける。庭に木や草を植えたり、屋根を修理したり、犬を獣医のところへ連れていったり、友人と一日過ごしたり……そういうことをするのは楽しい(リサ・マインツ・メッセンジャー、『ジョージア・オキーフ』)
とも述べているのですが、そうした日常の雑事を踏まえつつ、さらに自身の仕事についてこう結ぶのです。「でも、ある程度いら立ちは抱えていて、だからこそまた絵を描きはじめることができる。それがいちばん楽しいことだから―ある意味で、そのために他のすべてのことをやっている……絵を描くことは、わたしの生活を作っているすべてのものの意味を貫く糸のようなもの」
5月15日にうお座から数えて「仕事の流儀」を意味する6番目のしし座で上弦の月を迎える今週のあなたもまた、自然な変容に身を任せていくための儀式に淡々と臨んでいくべし。
古い存在感覚
古代キリスト教会最大の教父アウグスティヌスは、自然の風景を見ているときに記憶が大きく動くのだ、と述べていました。
いわく、「人々は外に出かけていき、山の高い頂、海の巨大な波、河の広大な流れ、広漠たる海原、星辰の運行などに驚嘆します。しかし自分自身のことは置き去りにして」いるのだと(『告白』)。
それらの自然はみな、自我の管理下に置かれた意識領域ではなく、広大な無意識領域においてその真の姿をあらわすからこそ、人はその巨大さに思わず圧倒されつつ、自分の中にもまた雄大な自然と同じような霊的働きが湧いているのを感じるのかも知れません。
そしてそれは自分が強固なエゴを持ち、社会の中で認められたいという承認欲求を持った人間であることを一瞬でも忘れ、より古層の存在感覚を思い出す瞬間でもあるはず。
今週のうお座は、そんな目に見えぬはずのものを見て、より深く大きななにかに包まれている自分を感じなおしていくことがテーマと言えるでしょう。
うお座の今週のキーワード
縦糸としてのちっぽけなわたしの感覚