うお座
遊んだり、遊ばれたり
絶え間ない自己暗示
今週のうお座は、スティーブン・キングの執筆流儀のごとし。あるいは、より鮮やかな白昼夢を作るべく、仕込みに励んでいこうとするような星回り。
現代アメリカを代表するベストセラー小説家であるスティーブン・キングは、誕生日であれクリスマスであれ、一日も休むことなく毎日必ず2000語分小説を書くというノルマをみずから課していることで知られています。
なぜキングはそこまで徹底できるのか。その秘訣について、彼は回想録の中で小説を書くことを「創造的な眠り」にたとえ、それは訓練によって可能になるのだと述べています。
寝室と同じように、執筆する部屋はプライベートな空間でなくてはならない。そこは夢を見にいく場所だ。そこに入る時間は毎日だいたい同じだが、出るのは自分の千の言葉が紙やディスクの上に記録されたとき。スケジュールは習慣をつけるため、夢を見る態勢を整えるためにある。毎晩同じ時刻にベッドに入ったり、毎晩決まったことをしたりして、寝る準備をするのと同じだ。執筆でも睡眠でも、我々には物理的にはじっとしていながら、昼間の平凡で合理的な考えから精神を解放させることを学んでいく。頭と体が毎晩、一定量――六、七時間かできれば八時間――の睡眠に慣れていくのと同様に、起きているときの頭も訓練によって創造的に眠り、空想による鮮やかな白昼夢を作りあげることができるようになる。その白昼夢がすなわち、よくできた小説なのだ。(『書くことについて』)
つらくしんどいことの方が多い執筆作業(それは他のどんな仕事も同じだろう)を、きもちよく寝て夢を見るための準備というイメージにすり替えるという自己暗示それ自体が、おそらくはキングなりの日課であり、執筆の秘訣だったのかも知れません。
4月21日にうお座から数えて「訓練」を意味する3番目のおうし座で木星と天王星の合(センセーション)を迎えていく今週のあなたもまた、キングを参考に自分なりの創造的な習慣づけを試みてみるべし。
「世界は劇場。人生は演劇。人間は役者。」(シェイクスピア)
子供の頃のことを思い出してみてください。
そこではまず最初に楽しい世界があったり、十分な遊び相手がいて、その後に遊びの楽しさがあった訳ではなかったはず。むしろ、なんとなくはずみや思いつきで始めた些細な遊びにフッと取り込まれ、はまりこんで夢中になり、完全にそれに舵を取られ、それがコード化してしまったとき、遊びが遊びとして実現していったのではなかったでしょうか。
これは、最初はほんの遊びのつもりでいたのに、いつのまにか遊びの世界に遊ばれていくと言ってもいいかも知れません。その意味で、今週のうお座もまた、いわば初公演の舞台台本に向き合う役者ような心持ちで、演劇世界に誘われていくことになるはず。
うお座の今週のキーワード
あらゆる場所をあそび場にしてしまうこと