うお座
踊るポンポコリン
とりあえずじたばたする、話はそれからだ
今週のうお座は、『曖昧に踊り始める梅見かな』(野口る理)という句のごとし。あるいは、みずから先陣を切ってこの世の春を開いていこうとするような星回り。
同じ梅を見に出かけるのでもまだ冬の間は「探梅」といい、立春を過ぎると「観梅」として春の季語になりますが、掲句はまだ寒気が厳しい中でも凛と香気を放ちながら咲く梅を見に出かけたところなのでしょう。
とはいえ、花見と言ってもブルーシートを敷いて酒盛りとしゃれこむには、まだ身体の方も冬仕様で開ききっておらず、縮こまってしまっている。それでも、「春告草(はるつげぐさ)」や「鶯宿梅(おうしゅくばい)」といった別名を持つ梅がさまざまな枝ぶりで咲いているのを見たり、そこにとまる鶯の鳴き声を聞いたりしているうちに、なんだか踊り出したくなってしまったのかも知れません。
初めは「こんな感じだったかな」とひどく曖昧に、次の動作を確かめながら、それでも踊り出してみると、身体の方が教えてくれるように、少しずつ思い出していく。手つきや足運びが冴えていると言うにはほど遠いにしろ、それはそれで鶯の初鳴きや百花に先がけて咲く梅の花と同様の気高さを帯びているのではないでしょうか。
2月29日に自分自身の星座であるうお座で土星と太陽と水星の3つの惑星が重なっていく今週のあなたもまた、たとえ完ぺきではなくても、とりあえず手を動かし、足を踏み出していくべし。
失われた右クリックを求めて
スマホの登場は多くの人の行動パターンと思考回路を決定的に変えてしまいました。画面と入力装置と通信が一体になるなんて誰も予想していませんでしたから、それによって情報アクセスが格段に容易になってしまったのもある意味で当然の成り行きではあるのですが、一方でそんなスマホの登場によって失われてしまった機能もまたあまた存在します。
むろん、そのほとんどは無駄や面倒が占めている訳ですが、そうでないものとして恐らく筆頭に挙げられてくるのが「マウスの右クリック」ではないでしょうか。
インターネットで未知の情報と直面した際、「検索」でとりあえず意味を調べたり、「ソースを表示」でその裏側や台本を盗み見、「ファイルを保存」で少しだけイケナイ気持ちになったり。未知をいったんカッコに入れ、さまざまなコマンドを開ける右クリックは、その操作だけでどこか気持ちが昂ぶったものですし、そこには効率や最適化とは別の“情緒”があり、それはどこか先の「梅見の踊り」にも通じるところがあるように思います。
今週のうお座もまた、いつのまにか自分が切り捨ててしまった失われたコマンドを改めて呼び出し、かつてあった情緒を温めていくことがテーマとなっていくはず。
うお座の今週のキーワード
未知をいったんカッコに入れて、うろうろすること。