うお座
気配と合図
紙一重の関わり
今週のうお座は、『亡き父に少し開けおく白障子』(藺草慶子)という句のごとし。あるいは、気配や配慮を通してさりげなく誰かとつながっていこうとするような星回り。
「障子(しょうじ)」は冬の季語。現代人の感覚からすれば「どうして障子が冬?」と疑問に感じてしまいますが、もともと障子は防寒のために発明された建具だったからというのがその理由のようで、筆者も子供の頃に「ちゃんと障子を閉めなさい」とこっぴどく怒られた記憶があります。
掲句はしかし、そんな障子を生きている人間や猫のためではなく、亡き父のためにあえて少し開けておくのだという。そう言われてみると、障子の向こうにうすく影が浮かんでおり、よく見ればそれは懐かしい面影をかたどっているようにも思えてくる。死者の方でも、生きている者の前にはっきりと自身の姿をあらわす訳にはいかないけれど、障子越しにそれとなく接するくらいであれば、そばに来やすいのではないかという気もしてくる。
ただ死者とのささやかな交流という文脈は脇に置いたとしても、こうした存在感のかすかな誰かのために「少し障子を開けておく」といった心配りは、殺伐とした人間関係の中にいるとどうしても忘れがちになってしまう類いものでもあるように思います。
12月5日にうお座から数えて「他者とのやり取り」を意味する7番目のおとめ座で下弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、虚勢を張って自分を大きく見せる代わりに、こうしたささやかな心配りをこそ思い出していきたいところです。
オオカミの遠吠え
ここで思い出されるのが、かつて日本にも生息していた狼たちの遠吠えです。冬場にエサを求めて里にやってきた彼らは、日没間近の薄暗さの中で、あちらこちらから集まって、その鳴き声を次第に一つにしていくのです。
狼たちは、たとえお互いの顔が見えなくても声を通じて居場所を確認しあい、ときに声をそろえることで合図とします。彼らは平均4~8頭ほどの社会的な群れと形成するとされ、それは順位制を伴い、常に儀式的に確認しあうことで維持されたそうですが、そうして人間でいう友達とも夫婦とも家族とも微妙に異なる独特の関係性を作っていた訳です。
今週のうお座もまた、そうした狼たちのように、ある種の名前のついてない、微妙な関わりや関係性をこそ大事にしてみるといいでしょう。
うお座の今週のキーワード
夕闇とともに訪れるもの