うお座
揺るぎない思い
水中深くにある「芯」へ
今週のうお座は、『みずうみや芯の動かぬ良夜かな』(岡田一実)という句のごとし。あるいは、死ぬ前に見るとされる走馬燈を先取り的に体験していこうとするような星回り。
みずうみに芯があるとは、作者に言われるまで思いもしませんでした。しかし、良夜の月の光に照らされて、ひたひたと静まりかえっていくみずうみを眺めれば、確かにそこに深い叡智のような芯があるのだと、信じられるものなのでしょう。
もちろん水というものがその本質上、流れてやまず、とどまることがないのだとしても、揺るぎないみずうみというものが成立するのは、やはり「芯」があればこそ。
また、良夜に冴え冴えと輝く「月」とは、昼間の現実―肩書だとか社会的立場によって固められた大人の都合―とは異なるもう一つの現実、たとえば走馬燈が見せるような心の真実であり、そこから降りそそぐ光は、日常的な意識と対応している湖面をつきぬけてもっと深いところへ、水中深くにある「芯」へと到達しているはず。
逆に言えば、掲句はこれまでどこか漠然としていたみずからの「死」ということを生々しく感取していくなかで、自分の本当の気持ちや心のありか(芯)を見定めようとしているのだとも言えるかもしれません。
多くの人は大胆な試みを通じてより偉大なことを達成しようとするものですが、実際に経験するそういう瞬間というのは驚くほど静かなものです。9月29日にうお座から数えて「実存」を意味する2番目のおひつじ座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、動きのダイナミクスよりも動かなさだったり、研ぎ澄まされた静止の方に近づいていくべし。
水面下での動き
この宇宙では「現状維持」などということは本当はありえません。一見すっかり落ち着いていて、目立った変化など起こる気配もないように見える状態ですらも、実際には絶えざる動的平衡のもとで成り立っているに過ぎないのです。
これは逆に言えば、「現状維持でいこう」という態度はすべからく自分の内部や周囲との動的平衡を破壊していかんとする宣戦布告に他ならないということでもあります。このことは、今のあなたならばよく分かるはず。
まだ際立った人生の変化や、特別なイベントの最中にいる訳ではないにしても、水面下ではギリギリのところまで葛藤が高まっていたり、今にも決壊寸前のダムのように「その時」が迫っていること、そしていったん始まればそれがドラスティックな変化となるだろうこともうすうす感じとっているのではないでしょうか。
逆説的ではありますが、今週のうお座は、そうした自分を取り巻く目まぐるしい流れを感じるなかで、かえって揺るぎないものになりつつある核心(確信)に思い当たっていくことがテーマとなっていくでしょう。
うお座の今週のキーワード
嵐の前の静けさよ