うお座
お忘れじゃありませんか?
天災は忘れた頃にやってくる
今週のうお座は、『栗はねて大入道と化けても見よ』(石井露月)という句のごとし。あるいは、存在しないはずの動きや言葉を取り込み直していこうとするような星回り。
個人的なことですが、大学生の頃にmixiに「爆ぜる」という言葉を使ったことを、ひとりの先輩に執拗にとがめられ、「そんな言葉は存在しない」と言われたことがありました。辞書を開けば確かめられるはずなのに、いったんありもしないと決めつけた言葉は彼にとっては存在しないことになっていた訳です。
掲句が面白いのは、不意に栗が爆ぜ、大きな音を立てて跳ねていったその当の栗に呼びかけてしまっているところ。さらにそこから踏み込んで、「そのような大きな音を立てうるならば、いっそ大入道に化けてみたらいいではないか」と思わず呼びかけてしまっている。
あたかも「さるかに合戦」かのように、栗がいのちを持って、自分の意志で動き出しているかのような、そんなアニミズム的世界観が、「栗はねて」という言葉に、そして書かれていない「爆ぜる」という表現がここに宿っているのだとも言えます。
そう考えてみると、かつて「そんな言葉は存在しない」と言い放った先輩というのも、アニミズム的な世界観を見失った近代人としてはごく当たり前の発言だったのかも知れません。
11月1日にうお座から数えて「ありえない事態」を意味する12番目のみずがめ座で上弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、無意識そのものが爆ぜていくような感覚を少なからず覚えていくはず。
存在としての新陳代謝
ウイルスというと、私たちはつい目に見えないテロリストのごとき恐ろしいイメージを抱きがちですが、人体を一方的に攻撃している訳ではありません。
まずウイルス表面のたんぱく質が、人体の細胞側にある血圧の調整に関わるたんぱく質と強力に結合します。これは一見すると偶然のようにも思えますが、そもそも宿主とウイルスのあいだには惹かれあう友人ないし恋人関係があったのだとも解釈できます。
さらに、人体側の細胞膜にある宿主のたんぱく質分解酵素の方から、ウイルスたんぱく質に近づいていって、これを特別な位置で切断すると、その断面がするすると伸びて、ウイルスの内部の遺伝物質を人体の細胞内に注入するに至るのだそう。つまり、ウイルス感染というのは、宿主側がきわめて積極的にウイルスを招き入れた結果、起きている。人間に置き換えれば、ほとんど自業自得と言われてしまってもおかしくないんです。
これはどういうことなのかというと、どうもウイルスの起源とも関係していて、ウイルスというのは生命発生の原初からいた存在ではなくて、もともと高等生物の遺伝子の一部として外部に飛び出したものだったのだと言われています。つまり、ウイルスは長らく家出していたけれど、ついに帰ってきた私たちの一部なのだということになります。
今週のうお座もまた、ほとんど忘れていた自分の思いや感情、業や縁などを改めて引き受けていくことがテーマとなっていくでしょう。
うお座の今週のキーワード
自業自得