うお座
波乱万丈などいらない
互いを消費しあわないために
今週のうお座は、モットーとしての平穏無事。あるいは、「何もしないでいる」ことをただ文字通り遂行していこうとするような星回り。
『悪魔の辞典』の日本語版の著者としても知られている別役実には、『現代犯罪図鑑』(1992)という著作もあり、そこにはこんな記述があります。
ある種の人間は、理由なく「何もしないでいる」ことが出来ない。理由なく「何もしないでいる」と、それだけで罪悪感にとらわれ、苛々させられるのである。従ってその種の人間は、「何もしないでいる」間中、何故「何もしないでいる」のかということを、「言いわけ」として自分自身につぶやき続けることになる。そしてこの「言いわけ」が、時として「何もしないでいる」ことへの極端な見せしめのように作用して、「最悪の手段」を選択してしまうことがある。この彼の思いついた「窃盗」が、まさしくそれであった。
ここでは破滅指向の心性がうまく説明されていますが、こうしたいつも何かせずにはいられない類の人間というのは、たまたま「窃盗」をやめられたとしてもそこで終わりということにはまずなりません。「平穏無事に生きている」ことを不自然で、身の丈に合わないと感じてしまうがために、どこかで「ただ在ること」に慣れていかない限り、手を変え品を変え極端な選択を取ったり、「見せしめ」を続行していくはず。
平和だが何も起きない平坦な日常よりも、不幸に見えたとしても波乱万丈な毎日の方が心の隙間を埋めてくれるかも知れない。こうした心理は、しばしば共依存や共食い的関係の温床となっていることがありますが、そうした関わりを未然に防ぐためにも、ときどき「なにもしないでいる」時間を過ごすことも大切なのではないでしょうか。
その意味で、9月26日にうお座から数えて「息継ぎ」を意味する8番目のてんびん座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、ただ息をして本当に必要なことだけをこなしていくだけの生活を心がけてみるといいかも知れません。
怠けるが勝ち
ナマケモノがなぜ怠け者に見えるかと言えば、まず動き自体が鈍いこと、そして木にぶら下がって1日10時間も眠っているから。ただ、その代わりに1日にわずか10gの葉っぱを食べるだけでよく、糞尿も1週間に1回程度ですむというのだから、考えようによっては人間と比べて格段に省エネで地球にやさしい生き物という風にも言えます。
興味深いのは、このナマケモノの近縁種に、かつてオオナマケモノという動物がいたこと。とはいえ、ナカケモノより怠けているからそう名付けられた訳ではなく、彼らは地上で活動し、食欲も旺盛、成長すれば体長6メートルにもなったと推定されているのだそう(ナマケモノの体長は約50~60cm)。
このオオナマケモノはどう考えてもナマケモノよりも積極的に生き、周辺の環境においてもより強大な存在であったように思えるのですが、しかしオオナマケモノの方は進化の過程で絶滅してしまい、生き残ったのは木の上で「怠けていた」ナマケモノの方だったというのですから、なんとも興味ぶかい話です。
今週のうお座もまた、このタイミングで改めて「より強く、より多く」といった方向性の見直しをはかっていくとよいでしょう。
うお座の今週のキーワード
したくないこと無駄なことにはとことん消極的になっていくこと