うお座
夢の再来
世界の中心としての唇
今週のうお座は、『霧吸うて来し唇を汝に与ふ』(有澤榠樝)という句のごとし。あるいは、持っている力のすべてを総動員していこうとするような星回り。
冷ややかに立ち込める「霧」は秋の季語。宵の口、もしくは早朝だろうか。濃い霧のなかを訪ねてきた自分を「霧吸うて来し唇」といい、それを惜しみなく「汝」に与えるのだという。
もちろんこれは性愛を暗示する句ではあるのですが、それ以上に人が誰かを愛しむという営みを、こうも斬新な切り口からさりげなく言い表すことに成功している例はめったにお目にかかれないのではないでしょうか。
秋の霧に包まれ、外出するにも気が重く、どこか世間からの切り離され、孤立してしまったかのような気分でいるとき、もしこうした「唇」を相まみえれば、ほとんどそれは世界の中心のように感じられるはず。
そのことを作者自身もよく分かった上で、ここぞとばかりに相手に自分のすべてを与えようとするのは、うお座特有の強い一体化願望のあらわれなのだとも言えるかも知れません。
その意味で、9月10日に自分自身の星座であるうお座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、全身全霊を注ぎこんでいく先を見つけていくべし。
羊水呼吸する胎児は夢を見るか
胎児は生後3カ月もすると、身長はわずか4センチながらも一人前に舌なめずりを始め、羊水に舌つづみを打つのだと言います。
そして来る日も来る日ものどを鳴らしてこれを呑み続け、さらには胸いっぱいに吸い込んでしまう。肺の袋に羊水を流し込んでは、それを吐く。胎児のこうした「羊水呼吸」は、それ以後、明るく広い世界へ解き放たれる出産の日までえんえんと続けられていくのだそう。
その姿は、どこか太古の海を遊泳した魚類のエラ呼吸を思わせはしないでしょうか。そしておそらく胎児は、出産時に脊椎動物の上陸劇を再現しているのであり、羊水呼吸を始めた頃から見始めた、地球上の生物進化の夢とともに育ち、やがて地上に生まれてくる頃にはその一切を忘れてしまうのです。
今週のうお座は、そんないつの間にか忘れてしまっていた古い夢を、改めてすくいとり、思い出していくことがテーマとなっていくでしょう。
うお座の今週のキーワード
夢こそまこと、うつし世はゆめ