うお座
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今週のうお座は、<どけのワーク>のごとし。あるいは、これまで幾度となく繰り返してきた逃れ得ない行動パターンをどかしていこうとするような星回り。
かつて「伝説のセラピスト」と呼ばれた吉福伸逸は、ボストンでジャズミュージシャンを目指し、挫折後はカルフォルニアでサンスクリット語を学び、30歳で日本へ帰国するという特異な経歴をへて、「統合失調症の人と対するときの、自分をごまかさない真剣勝負な感じ。そこに、武術をやってるときの本気度、音楽をやってるときと同じ質の高さ」をどんな人と対するときにも自然と発揮できるという特異な対人姿勢の持ち主だったそうです。
そして彼の主催したワークショップもまた、そうした吉福の自由で、即興的で、ダイナミックな対人姿勢を疑似的に体験することで、「頭の中がシャッフルされるような」効果をもたらすものだったようです。中でも有名なのが、「どけのワーク」です。
九十三年に私が体験したもののバリエーションで、三人一組でおこなう。ワークをおこなう者①は目の前の椅子に座った相手②を、身体的接触以外のあらゆる手段を使って、椅子からどかせたら終わり。選手交代となる。残ったひとり③はオブザーバーだ。②は①の、心の底からどいてほしい、と思う気持ちが伝わるまでどいてはいけない。③は、①と②が中途半端なところで妥協していないか見守る役。(稲葉小太郎『仏に逢うては仏を殺せ』)
9月4日にうお座から数えて「引き受けがちなパターン」を意味する10番目のいて座で上弦の月(行動の危機)を迎えていく今週のあなたもまた、この「どけのワーク」をみずから実践していくくらいのつもりで、自分のタガをはずしてみるといいでしょう。
「VACANCY」と書かれた看板
日本語に直せば、「空き部屋あります」でしょうか。いや、厳密には「空き部屋あり」くらいのどこか人を突き放したような素っ気なさがミソなのかも知れません。
すっかり薄暗くなった路上で目にするモーテルのこの表示が、1日の移動に終止符を打たせる。目的地を定めない、気まぐれな移動のさなかにあって、その日その日の安堵を得られるのも、この表示のおかげなのだ。
多くの旅人は、そうやって移動してきた。そしてきっと12星座でもっとも流動的なうお座にとっては、人生という旅路においても、その途上で「VACANCY」のサインを偶然みかけることで、予想だにしなかった展開を見せることがしばしばだったはず。
どこに、いつ、空き室を探し当てたのか。そこに、祖国から離散したあらゆる旅人たちの、単独性の根拠があり、また、それが物語の乗り換え拠点にもなっていったのではないか。
その意味で、今週のうお座にとっては、強いて言えば自分がハマりこんできた文脈や物語を適切なところで切断し、余白をもうけていくことがテーマになっていくのだと言えます。
うお座の今週のキーワード
切断と余白