うお座
夢から夢へ
催眠の解除
今週のうお座は、子守歌をもう1度聞き直していくよう。あるいは、自身にかけられた呪いをまた一つ解いていこうとするような星回り。
かつて寺山修司が指摘していたように、子守歌というのは基本的にうそ八百であり、テレビアニメにもなった『日本昔話』のオープニングで「坊や~良い子だ、ねんねしな~♪」と歌われてるのを改めて聞き返せば、例えば三匹の子豚を襲ったオオカミがまったく同じようなセリフを吐いていたことに気が付くのではないでしょうか。
オオカミは催眠術的な言葉遣いでたくみに子豚たちを油断させ、しまいには残らず食べてしまった訳ですが、すべての親というのは機を見て「子どもを食べてしまおう」と考えていたように思います。
それは子どもを自分の言いなりにして、無力化してしまおうという親のエゴイズムであり、地方によってさまざまに異なって伝えられてきた子守歌のバリエーションは、そのまま青少年を無力化するさまざまな呪いの言葉でもあったのではないでしょうか。
母親というのは眠る子の顔に向かって半ば無自覚的に催眠術をかけるものであり、そこで脳裏に叩き込まれたプログラムは、しばしば子がその生涯をかけて対峙し、克服していかねばならない親世代のあいだで共有されていた古臭い価値観や常識に他ならないのです。
その意味で、6月21日にうお座から数えて「再誕」を意味する5番目のかに座に太陽が入る夏至を迎えていくあなたにとって、今週は自身がかかってきた催眠術からの脱却を試みていくにはもってこいのタイミングと言えるでしょう。
クレーの天使
世のため人のためとか、最近であればSDGsとか、そういう道徳臭い手垢に染まった想像力の使い方もまた、今のあなたにとっては無用の長物以外何物でもないでしょう。その点で思い出すのは、パウル・クレーが日記に書いていた夢の話で、日本人の芸者に三味線の音を所望する次のようなくだりです。
心が誘惑に駆られると、たちまち私の耳はかすかに戸を叩く音をとらえた。その音に誘われていくと、小さな守護神が表れ、可愛らしい手をさしのべ、私を天界にそっと連れて行った
こうした偶然の一致の感覚と自分を軽やかに浮遊させていく想像力こそが、既存の価値基準や親の呪いにとらわれずに、むしろそれらを振り切っていく原動力にもなっていくのではないでしょうか。
なおクレーにとって「天使」とは、「傷つきやすさと極端な脆さを持ちながら、われわれ人間を保護する神的な存在」のことを指しているらしいのですが、これはうお座の目指す究極の人物像を象徴したものとも言えるかも知れません。
うお座の今週のキーワード
うつし世は夢、夜の夢こそまこと