うお座
交わりに沈む
※12月13日〜19日の占いは、諸事情により休載いたします。誠に申し訳ございません。
次回は12月19日(日)午後10時に配信いたしますので、どうぞよろしくお願いいたします。
「浮かびて」と「沈みて」
今週のうお座は、「命あるものは沈みて冬の水」(片山由美子)という句のごとし。あるいは、わが身やわが名にきちんと実感をもって宿り直していくような星回り。
この場合の「命あるもの」とは、たとえば池を泳ぐコイや亀などを思い浮かべてみるといいのかも知れません。
眼前に広がっている冷たい冬の水は、しーんとしずまりかえって、どこか「絶滅」という言葉の響きを連想させますが、作者はそんな状況だからこそ、かえって命を持っているものに鋭敏になり、それは確かな意志を持って「水中に沈んでいる」のだと感じたのでしょう。
逆に言えば、生き物というのは命を失えば骸(むくろ)となって水面に浮かんでくるものであって、それは人間も同じでしょう。その意味で、掲句は「命なきものは浮かびて」という言葉を背後に感じながら詠まれた句でもあるわけで、まだ生きている私たちは誰もが命あるものとして、この世に「沈みて」在るのだとも言えるのです。
11日に自分自身の星座であるうお座で上弦の月(行動の危機)を迎えていく今週のあなたもまた、日頃そこから「浮かび」がちな自分の名前や身体、仮面や役割にぐーっと「沈みて」あることを、改めてありがたく喜ばしいこととして感じていきやすいでしょう。
自分の中の古い地層
文化人類学におけるいわゆる‟未開人”のフィールドワーク調査では、しばしばとても不合理な考え方をする人々のことが報告されます。
例えば、北米大陸の先住民の中に、「私はインコである」という発言をして宣教師たちに気狂い扱いされていた人がいました。インコは鳥であって人間ではないだろうと聞いても、「いや、私はインコです」という答えしか返ってきません。
しかし、先住民の名前は「サンダーバード」とか「レイブン」など、彼らの神話に登場する伝説上の鳥や他に熊や狼やアザラシなどといった動物たちにあやかったものが非常に多く、つまり彼らは伝統的に自分たちと動物とのあいだに共通性を見出してきた訳です。
こうした思考方法のルーツは非常に古く、20万年前にホモ・サピエンスが出現した時に芽生えたアナロジー能力、つまり似ているものを似ていると認め結びつける能力であると考えられますが、人類の最初期、私たちはみな詩人だったのであり、響きに満ちた呼び交わしの中で、人間は「人間」という枠に囚われず、さまざまなつながりを自由に見出していたのだと言えます。そして、「沈みて」在るということは、こういう交わりの中に生きるということでもあるのではないでしょうか。
今週のうお座もまた、自分なりの「沈みて」生きる感覚を改めて感じてみることがテーマとなっていきそうです。
うお座の今週のキーワード
私はインコである