うお座
経年変化の楽しみ
膝がしらの底光り
今週のうお座は、「膝がしら木曽の夜寒に古びけり」(小林一茶)という句のごとし。あるいは、自分を支えてくれてきたものへのしみじみとした思いが浮かんでくるような星回り。
作者五十三歳の頃の作。山深く静かな木曽の地では、秋の冷えも早い。こうして正座をしていると、寒さがしみるなあ、と突き出た自分の膝がしらを見ていたときの感慨を詠んだのでしょう。
しかし「古びけり」という表現には、単に自身の衰えや加齢への実感を表わしただけではなく、時の経過を俯瞰的に眺める視座や、そこでかすかに昂然としている作者の思いも垣間見えてきます。
こんな自分を長いこと支えてくれて、よく頑張ってくれたなあ、今の自分にはなんだか底光りして見えるぞ、といいたい気持ちが出てきたのだろう、と想像してみても、そこまで不自然ではないはず。
中七の「きそのよさむに」という言葉の語感もまた、いかにも素朴で飾り気のない古樸な印象を受けますが、それは自身と文字通り二人三脚でやってきた四股への思いも重ねられていたのかも知れません。
13日にうお座から数えて「来し方行く末」を意味する11番目のやぎ座で上弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、うまくいけば自分が何によってここまで運ばれてきたのかということに改めて気付いていくことができるはず。
分度器の放射線
小学校の卒業アルバムなどを久しぶりに開いてみると、顔立ちであれ、成績であれ、人気であれ、かつてはわずかな違いに過ぎなかったものが、時の経過とともにはかり知れない程度に広がっていることに気が付くことがあります。
まるで分度器のように、1度の違いに過ぎなかったものが、放射状に伸びた線をどこまでもたどっていくと、それぞれまったく異なる国にたどり着いてしまうように。
そうした放射状の広がりというのは、単純に優劣や勝ち負けの二分法などでは把握できるものではない代わりに、ある程度の高さから点と点を結んでいくのでなければ気が付くことができない訳で、この場合の高さとは、埋没しがちな日常からの距離であったり、精神の垂直性とも言い換えることができるはず。
この世で最も不思議なものは人との縁。今週のうお座は、そんな感慨が不意に湧いてくる瞬間や、そのための「高さ」の確保を大切にしてみるといいでしょう。
うお座の今週のキーワード
古る(ふる)・・・①年月がたつ。②年をとる。老いる。③ありふれる。角が取れる。