うお座
謎と向き合う
こちらは8月16日週の占いです。8月23日週の占いは諸事情により公開を遅らせていただきます。申し訳ございません。
自分ひとりだけでは生みだし得ないもの
今週のうお座は、「秋風や謎のやうなる古酒の壺」(原月舟)という句のごとし。あるいは、垂直的な次元にみずからを引き入れていくような星回り。
目の前に酒の入ったひとつの壺がある。それは今年できた酒ではなくて、それなりの年月を熟成させた古酒である。すると、その酒壺もまた相当の古さなのかも知れません。
秋風が吹き始めると、頭上にひろがる天も物寂しく感じられてくるものですが、作者の眼前の壺もどこか呆然としていて、つらつらとそれを見ているうちに、壺があたかも一個の謎として立ち現れてきたというのです。
もちろん事実としては壺は壺に過ぎません。それでも、掲句には単なる主観の押しつけと言い捨てることのできない深い余韻があり、ある一定の条件がそろわなければ決して生みだし得なかった思考の余地が広がっていたのでしょう。
幾重にも重なっていくさざ波のような気付きをこの壺は内包しており、古酒の味わいは想像と体感のはざまでいよいよ深まっていく。掲句は、そうしたある種の瞑想体験やその予感について詠ったものとしても解釈できるように思います。
16日にうお座から数えて「問いかけ」を意味する9番目の星座であるさそり座で上弦の月を迎えていくあなたもまた、人間関係であれ、社会問題であれ、いつの間にか自分が巻き込まれていた事態をひとつの「謎」として捉えなおしてみるべし。
写生の要点
俳人の飯田龍太は、写生という手法の要点は「見つめて目を離さない」ことにあるのだと述べていました。つまり、見つめて、心のなかで普段は感じることのない別途の実感が湧いてくるまで、目を離さずに見つめ続けるということが、俳人の俳人たる由縁と考えていた訳です。
秋の日に酒壺を見てそれをただ客観的に説明するのでも、パッと見て直情的にその印象を語ったり、「ひっそりとした」といったそれっぽい表現を借用してくるのでもなく、じっくりと時間をかけて生まれてくる実感を養ってパッとそれを掴み取るのです。
その意味で、掲句のように尾を引く後に広がってきたのだろう感慨をそっとのせた言葉もまた、写生の賜物なのだと言えます。
同様に今週のうお座もまた、これはと感じた対象を前にした際には、日ごろ絶え間なく続く思考をいったん止め、俳人の目を持って向き合っていけるかが問われていくでしょう。
うお座の今週のキーワード
別途の実感