うお座
醒めたり惚けたり
夢遊病者のごとく
今週のうお座は、泉鏡花の『龍潭譚(りゅうたんだん)』の一節のごとし。あるいは、夢の中を歩いているような気持ちになっていく星回り。
行く方も躑躅(つつじ)なり。来し方も躑躅なり。山土のいろもあかく見えたる、あまりうつくしさに恐しくなりて
これは神隠しをテーマに道に迷った男児の不思議な体験を描いた泉鏡花の短編小説『龍潭譚』の一節であり、主人公が見渡す限り躑躅が咲く山を歩く下りで出てくる箇所。あまりの美しさは幻想幻覚を引き起こし、自分がこの世ではないどこか見知らぬところを歩いているような気持ちにさせるもの。
そこでは何がおこるかわからない。まさに鏡花の世界は、日常を超えた美しさに入り込むことによって起こる、異次元体験なのでしょう。
それはこれまで当たり前のようにあった日常に突然穴があき、何かがその向こうに見えてくるという形で始まっていくものの、次の瞬間にはまた隠されしまい、そこで私たちは何か見てはいけないものを垣間見たような気になってくるのです。
21日深夜にうお座から数えて「陶酔」を意味する5番目のかに座で上弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、ダイナミックな時間的空間的揺らぎを体験していくことになるかも知れません。
Between the Worlds
ミヒャエル・エンデの『はてしない物語』の終盤、夢の世界「ファンタジーエン」での冒険を終えた主人公バスティアンに向かって、謎の本「はてしない物語」の持ち主は、次のように語りかけました。
ファンタジーエンに絶対に行けない人間もいる。……行けるけれども、そのまま向こうに行ったきりになってしまう人間もいる。それから、ファンタジーエンに行って、またもどってくるものもいくらかいるんだな、きみのようにね。そして、そういう人たちが両方の世界をすこやかにするんだ
そう、夢と現実の両方の世界をすこやかにするためにこそ、祈りや儀式は行われるし、小説もまた書かれる。
だからこそ、それらは何かぶっとんだ非日常なんかではなくて、人間が人間らしくあるために、この世界の片隅で粛々と日々実践されていかねばならない「生命線」なのです。
今週のうお座もまた、そんな生命線をどこにどう引いていくのか(デザイン)を改めて考え、そしてみずからの手で実践してみてください。
今週のキーワード
ブランコ