うお座
コスモスの一部として在ること
ちょうどいいバランス
今週のうお座は、「帆柱を便(たより)に渡るつばめかな」(中川乙由)という句のごとし。あるいは、持ちつ持たれつのスケールを広げていこうとするような星回り。
作者は江戸時代初期の伊勢の人。つばめは春になると、南の国から日本に渡ってもとの巣に戻ってくると言われています。この句を読めば、はるか南洋の海を行き来する船の映像が浮かんでくるはず。
つばめたちはそうした船の帆柱を道しるべにして、またそこで羽を休めては、日本に渡ってくる訳ですが、それは自然もまた時に人間の営みに寄り添いつつ、その力を借りていく時もあるのだということでもあります。
力を借りたり、与えたり。もちろん、つばめ自身は人間を利用してやろうという気などさらさらなく、ただ飛んだり休んだりする行為のあいだにたまたま人間の営みがある訳ですが、それでも掲句には自然と人間との持ちつ持たれつのちょうどいいバランス感覚がまだまだ当たり前のように残っていたのでしょう。
3月6日にうお座から数えて「環境との折り合い」を意味する10番目のいて座で下弦の月(意識の危機)を迎えていく今週のあなたもまた、自分のためばかりに動くのでなく、周囲や社会のためという方へとバランスをきっていくことがテーマとなっていきそうです。
生命力を解き放つ
例えば、なぜ人は傷つくことがあってなお、誰かを愛そうとするのでしょうか。あるいは、ひどく批判されることがあっても、なぜ表現することをやめられないのか。
それは、生きていくモチベーションを自分ひとりだけで持ち続けるのは困難だから、という理由に尽きます。そう、ややこしいことはさておき、今週のうお座のテーマもまた、これからも生きていくために、いかに人を愛しうるか(愛されるかではなく)、というところにあるのだとも言えます。
われわれは生きて肉体のうちにあり、いきいきした実体からなるコスモス(大宇宙)の一部であるという歓びに陶酔すべきではないか。眼が私のからだの一部であるように、私もまた太陽の一部なのである。(D・H・ロレンス『黙示録論』)
一般的には『チャタレー夫人の恋人』の作者として知られるロレンスがテーマにしたのは、近代社会の狭くせせこましい道徳の中でがんじがらめになった生命力を、偽善の拘束から解き放つことでした。
同様に、「いかに人を愛しうるか?」という命題は、今週少なからずあなたの“生まれ変わり”に関わってくるでしょう。
今週のキーワード
熟慮することと求愛すること