うお座
転回へ
※2021年1月4日~1月10日の占いは休載とさせていただきます。(2021年1月3日 追記)
異なる思想の合流地点
今週のうお座は、ひとつの臨界領域としての辺境にたたずむよう。あるいは、精神的歩みの必然として何らかの<転回>に行き着いていくような星回り。
文化は求心的に大都市や大学にあつまると人々は考えがちですが、キリスト教が古代ローマから見て辺境の地であるパレスチナで生じたり、カントがケーニヒスベルクというドイツの端っこで最先端の哲学を構築したように、歴史的にも物事の新しい観点というのはむしろ辺境から現れてくることの方が多いように思います。
辺境に現われた新しさが時代を画することがあるのは、おそらく思想の伝播における終着点のように見えて、そこが同時に、別の思想卷からの思想の終着点であり、つまり思想の合流や混淆を経た結果、決定的な<転回>が生じることで新たな中心点となっていくからでしょう。
そう考えれば、明治維新が薩摩や長州から始まったのも決して偶然ではなかったはずです。
つまり、辺境とは一つの層から成り立つわけではなく、いくつもの越境や、外部と内部の交流が積み重なっていくことで出来上がる、臨界領域なのだと言えます。
30日にうお座から「再誕」を意味する5番目のかに座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、自分自身がそうしたひとつの転回となっていくでしょう。
死者と生者の交差点
例えば、新宿からほど近い四谷三丁目は、異様なほど坂道の多い街で、その坂の途中や崖沿いはたくさんのお墓で覆い尽くされています。そうしたお墓というのは、共同体の周縁や外部ギリギリの場所、すなわち辺境に設けられるものですが、いまは栄えている四谷三丁目も、昔はある種の辺境だったということでしょう。
中沢新一が指摘しているように、墓地の周りには日本の街の常として必ず花町ができるそうで、当然そうした花町の周囲には小洒落た飲食店街ができていき、結果としてその一帯が繁華街となっていくそうです。
あのあたりの崖には、既に古墳時代には横穴墳墓が作られていたそうですが、そうして死者の念が幾重に積み重ねられてきた場所に、食と性という人間の二大生存本能を満たすための機能がかれてきたという意味で、四谷三丁目という町が、いかに転回した辺境の地であったかということがよく分かります。
土地が放射する力を受けて、人はそれにふさわしい街を作るものなのだとして、今のうお座もまた、自分なりの「街」を作っていく最中にあると言えるのではないでしょうか。
この年末年始は、自分がいったいどんな土地や死者の念を受けとって生きているのかということについて改めて考えてみるといいでしょう。
今週のキーワード
繰り返される越境、そして外部と内部の交流