うお座
泥棒を見守る
棹(さお)のゆらめき
今週のうお座は、「よろよろと棹がのぼりて柿挟む」(高浜虚子)という句のごとし。すなわち、安定や確定とはほど遠い状態の自分を見守っていくような星回り。
中原中也の「ゆあーんゆよーん」に限らず、Y音で始まる擬音語はどうも作家や詩人が愛用していることが多い語のひとつであるように思われますが、掲句の命もまさに冒頭の擬音語の的確さにあります。
なんとなく庭を見て、実のなった柿の木へと目をやると、塀の外からよろよろと棹が伸びてきて、柿の実をはさんだ。取っている人の姿は見えないものの、頼りなく揺れながら棹の様子から、おそらく近所のあの子だろうと作者は目星をつけたのかも知れません。
確かにそれが誰なのかは見定めがたいけれど、棹のたゆたいに、心許なさやおぼつかなさ、うろたえ、よろめき、自信のなさ、それでもやむにやまれぬ衝動に駆られている様子など、実際の容姿から伝わる以上の真実がそこから伝わってきたのであり、だからこそ作者はそれを許したのです。
あるいは、棹を持った相手にどこかで自分を重ねていたのだという風にも考えられます。
31日にうお座から数えて「精神の交流」を意味する3番目のおうし座で、「立場の反転」の星である天王星とともに満月を迎えていく今週のあなたにおいても、つぶさに観察していた対象がそのまま自分に置き換わってしまうといったことが起きていくことでしょう。
芽生えのプロセス
人であれ、作品や実績であれ、アイデアであれ気持ちであれ、最愛の「未練」というものは、いつかは核分裂して自分の元から離れていく宿命にあるのだと思います。
生命の本質は「ゆらぎ」にあり、鞘におさまった剣のような完璧な調和というのは長くは続かず、時の経過とともにどちらかが必ずズレていく。これが「芽生え」の決定的なプロセスであり、種子から芽が生え土壌をつらぬき光のともとへと達したとき、この世界へと向いた生命のダイナミックな展開が始まっていくのです。
それは言い換えれば、これまであなたが内側に抱え込んでいた何かがようやく解き放たれ、日の目を見ていくことになる転換点なのだとも言えます。今週はそのすべての責任を取るつもりで(ただし手は出さず)、しっかり経過を見守っていきましょう。
今週のキーワード
命は留まることなし