うお座
落とし物はないですか?
自覚なき被害者
今週のうお座は、ベルンハルト・シュリンクの『朗読者』のごとし。あるいは、意識からとうに失われた因縁の糸口を再び見出していこうとするような星回り。
15歳の少年と36歳の女との禁断の性愛関係から始まり、第二次世界大戦時のナチスドイツ問題へと繋がっていくこの小説は、映画化もされたので、名前だけでも知っている人は多いはずです。
過去を持つヒロインの側の鮮烈さとは対照的に、主人公の少年が抱える愛に対する歪みは一見目立たず、それが逆にこの作品に深みを与えているように思います。
彼が愛だと信じて疑わなかったものは、じつは少年時代に大人から受けた性被害であり、そのトラウマのせいで大人になっても人付き合いがどうしてもうまくいかない。終盤で、ある人からそのことをはっきり指摘されるものの、彼は結局それを認めませんでした。
自分の欠点やそれにまつわるあれこれも、じつは誰かとの関係に誘発された後天的な傷に由来するものであり、本人が「自覚なき被害者」であるという例は、この作品の主人公の少年に限らず、じつは世に隠れているだけでそこかしこで生まれてきたのではないでしょうか。
23日に太陽がさそり座に入ると同時に、うお座から数えて「家族的無意識」を意味する12番目のみずがめ座で上弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、これまで自覚していなかった自身の背景や隠れた傷について認識を新たにしていくことができるかも知れません。
捨てる神あれば拾う神あり
人生を旅だとすれば、それは「捨てる」ことの連続だと言えます。故郷を捨て、親を捨て、友を捨て、家を捨て、職を捨て、恋人を捨て、つまらない夢を捨て、あんまり捨ててばかりいくので、やがて何もかもが流れる風景の一つのようになっていき、やがて走馬灯というものが出てくる。
しかし、ここで一つ視点を下に向けてみましょう。つまり、そんな流れ雲のような自分もいれば、誤って落としてしまった遺失物を拾いながら雲を追っていくような自分もいるのだと。そしておそらく、人が自分らしい人生を取り戻していくのはそういう時なんだと思います。
今週のうお座は、そんな後者の自分の姿が色濃く浮かび上がってくるようなところがあるでしょう。すなわち、いつかどこかで落としてしまった無くしものを取り返す。人生は「拾う」ことの連続でもある。そんな思いがむくりと顔をもたげてくるはずです。
今週のキーワード
拾い拾われそれに報いて我はあり