うお座
居住まいをただす時
「目玉を濡らさず」にいること
今週のうお座は、「暗闇の目玉濡さず泳ぐなり」(鈴木六林男)という句のごとし。あるいは、これからもまた未知の暗闇を生き抜いていくのだと思いを新たにしていくような星回り。
作者が戦地で負傷し帰還した際に詠まれた句。この場合、「泳ぐ」というのは、川や海やプールなど、具体的な場所を指して言っているのではないでしょう。
もっと抽象的な、しいて言えば、九死に一生を得て、生きざるを得なくなってしまった未知の時空間としての「戦後」という時代のことなのではないかと思います。
つまり、作者にとって戦後とは「暗闇」に他ならなかったのかも知れません。それでも、「目玉濡らさず」にそこを泳ぎ切らんとした。つまり、何が正義で、何が真実なのかを、けっして目を曇らすことなく見極める努力を放棄すまいという決意を、作者はここで表明している訳です。
このあたりは家業の織物会社を経営しながら俳人としての活動を続けた作者ならではのシビアなリアリストとしての性格がよく現れているように感じます。
19日にうお座から数えて「反省と自律」を意味する6番目のしし座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、なんとなく曖昧にしてきた自身のこれからの方針をいよいよ固めていくタイミングとなっていくでしょう。
可能なことと不可能なこと
改めて、目を曇らさずにあり続けるためには、私たちはどんなことに気を付ければよいのか。その点について、古代最大の教父であり、精神の秘密について鋭く迫ったアウグスティヌスは次のように述べています。
どこに存在するにしても、まだそれが何であるにしても、現在として以外には存在しない……それにまた、過去が真実なものとして語られるとき、記憶のなかから取り出されるのは、過ぎ去ったものそのものではない。そうではなくて、過ぎ去りながら感覚を通して精神の中に、いわば痕跡をとどめたものの心象から把握された言葉である。(『告白』11巻18章、今泉・村治訳)
そう、アウグスティヌスの言葉を借りれば、私たちに可能なのは「(感覚を通して)現在に到来しつつ精神の中に、その写しとしてとどまった予感から、言葉を紡ぎ出すこと」ができるだけなのであって、つまりは絶対的に主観的にしか何かを語ることはできないのだということ。
今週のうお座は、いつも以上にエゴに左右されないフラットな状態で自分について判断を下していくことができるはず。今後半年ほどの計画を立て直してみるのにもちょうどいいかも知れません。
今週のキーワード
曇りなき眼(まなこ)