うお座
目覚めとそれを語る言葉
早朝の静寂の中で
今週のうお座は、「明易しねむる力の衰へて」(鈴木基之)という句のごとし。あるいは、浅い眠りからまたひとつ目覚めていくような星回り。
「明易し(あけやすし)」は夏の季語で、日が長く夜が短くなるという点では「短夜(みじかよ)」と同じ意味ですが、こちらの方がより、もうすぐ明けてしまう心地よい夜の終わりを嘆いているニュアンスが強いように思います。
年をとると眠りが浅くなって、朝早く起きるようになると言いますが、掲句の場合は、どちらかと言うとそうした物理的な話というより、象徴的な意味合いを含んでいるのではないでしょうか。
つまり、今まで夢中になれていた幻想から目を覚まし、代わりにこれまで見ない振りをしていられた現実に目をやっていかねばならない。幻想の中に留まり続けるのにも、力はいるのだ、と。
6月13日に“自分自身の自然体”のサインであるうお座で、下弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、嫌でも「もういい加減これに気が付かないとヤバいぞ」とい“意識の危機”を通過していくことになっていきそうです。
気まぐれな一言ではなく
ただし真実を垣間見たものが時に極端な不幸に陥るのは古今東西を通して変わらぬ現実であり、例えば『ヘンゼルとグレーテル』に登場する幼い兄妹と「目の悪い魔女」などは、その意味でそれぞれがじつに分かりやすいモデルと言えるでしょう。
“子供”というのは内的真実と外的事実が容易に混ざり合い、真実に触れた心の動きの激しさの前で、しばしば発する言葉を失ってしまうため、それを行動で表現する他なくなった結果、残念ながら「非行」や「子供の気まぐれ」の名のもとに現実社会からは排斥されてしまうのです。
結果的に、「近代的で、進歩的な人間」が住んでいる現実社会は、ミヒャエル・エンデの『モモ』よろしく、功利主義や既成の枠組みにとわれることで「灰色」に染まっていく訳ですが、そこでは内界の素晴らしい秘密を垣間見た少女モモに対し、それを他人に伝えていくためには「お前のなかで言葉が熟さないといけない」という忠告が与えられていたのでした。
今週のうお座もまた、改めて心の真実の前に、それに相応しい言葉が出てくるまできちんと熟成させていくことの大切さを改めて思い出していきたいところ。
今週のキーワード
王様は裸だ