うお座
こちら愛、応答せよ
死角から思いは届く
今週のうお座は、「磨崖仏おほむらさきを放ちけり」(黒田杏子)という句のごとし。あるいは、遠く離れたところから放たれたメッセージを受け取っていくような星回り。
「磨崖仏」とは、自然の断崖や岩壁などに彫られた仏像のこと。
遠くから眺めてはじめてその全貌を認識できるくらい巨大なものも珍しくなく、2001年にイスラム教の過激派勢力によって破壊されたアフガニスタンの2体の仏像も当時その大きさで世界2位を誇った磨崖仏で、5世紀から6世紀頃に彫られたというその仏像の全長は大きい方で55メートルもあったそうです。
一方で、「おほむらさき」は美しい紫色の羽根をもつ日本の国蝶。句は、磨崖仏から飛び立ったオオムラサキが、まるで磨崖仏がこちらへオオムラサキを放ったかのように見えたということなのでしょう。
みほとけがこの世に蝶を放つということが、本当にあり得ることのなのかは分かりません。
しかし、場所も時代も遠く離れたところから、現に生きて今ここにいる自分へ何がしかの思いや知らせが届くということを、私たちは気が付かないうちにたびたび経験しているのかも しれません。
30日(金)にうお座から数えて「向き合うべき他者」を意味する7番目のおとめ座で新月を迎えていく今週は、あなたが受け取るべきメッセージを発している他者の存在をいかに敏感に察知していけるかどうかが問われていくはずです。心してください。
試されるものの本質
寺山修司はかつて『家出のすすめ』で、次のように述べました。
「人間は、一つの言葉、一つの名の記録のために、さすらいつづけてゆく動物であり、それゆえドラマでもっとも美しいのは、人が自分の名を名乗るときではないか。」
確かに、自分の名前を誰かに告げる瞬間というのは本来とても決定的な瞬間です。というのも、私たちは誰かに名前を呼ばれることで存在が確定するのだということを、どこかで知っているからです。
そしてそれは逆に言えば、そうした決定的な「名乗り出」を無視してしまったり、受け取れなかったりすることほど、悲しいドラマもまたないのだということでもあります。
そうした悲劇が起こるのには、さまざまな理由や原因があるのでしょうが、根本的には応え手としての私たちの方でも、自分なりの感覚を信じられずにいるからなのかもしれません。
その意味で今週のあなたもまた、もっと自分の感覚を信じていくことがテーマとなっているのだと言えるでしょう。
今週のキーワード
お使い/使者/化身