うお座
流動体としての<私>
水の動きに同調していく
今週のうお座は、「漕ぎぬけて川下に見る花火かな」(松瀬青々)という句のごとし。あるいは、湧き上がる生命力が、全身を貫いてたぎっていく様を実感していくような星回り。
川舟にのって移動しながら花火見物をしている。船頭に漕いでもらって同乗しているだけかもしれませんが、まるで自分の身体を動かしていくかのような表現になっているのが、どこか軽快な印象を与える句。
最初は川上ないし花火師たちが打ち上げているそば近くで花火を見ていたのを、何か気に入らなくて、比較的静かな川下へと移ってきたのでしょう。
「漕ぎぬけて」とは、「漕ぎつつ舟の間を通り抜けて」の意で、やはり人混みをかき分けて進む地上の難儀に比べて、ずっとスムーズで、風情があります。
その意味で、7月28日に先日の太陽に続いて金星もしし座へと移り、8月1日(木)にはしし座で新月を迎えていく今週は、うお座の人たちにとって「そんなに不自由な自分でいいの?」と問いかけられてくるように感じられてくるかもしれません。
そこは川舟にならい、できるだけ、狭い常識やがんじがらめな思考を取っ払って、ほんらい自分の身の内に潜んでいる生命力を解き放っていきたいところです。
「分かりやすさ」の外にあるもの
例えば、普通のメールのやり取りの中に、ぽんと俳句をはさんだら、世間の大半の人はそれをなんか変だなと思うか、どう反応したらいいのか分からなくてスルーして終わってしまうはず。
けれど、人と人、いやその大元となっている人と自然の関係というのは、本来そんなに簡単に分かり合えるものではありませんし、散文と散文のあいまにはさまっている一見意味不明な詩や俳句もまた、そんな分かり合えない相手(自然)をなんとか受け止め、取り込もうとする必死の“もがき”です。
声なき声を、なんとか人の言葉に置き換えんとするコミュニケーション上のチャレンジに他ならないのだとも言えます。
その意味で今週のうお座は、コンクリートで固められた街のすきまを縫うように、路地裏や道のはしっこを流れている水路を通して、ふだんなら目にとめないものに目をとどめ、いつもとは少し違う角度から人と響きあう。
そんな普段の文脈から大いに外れたコミュニケーションやチャレンジを大いに楽しんでいきやすいタイミングなのだという風にも言えるかもしれません。
今週のキーワード
「人は同じ川には足を2度入れることはできない」(ヘラクレイトス)