うお座
日常と神話の接続
あり得ないことがあり得るとき
今週のうお座は、「四百の牛掻き消して雹が降る」(太田土男)という句のごとし。あるいは、自分を取り囲む「ウソ」と「マコト」の境界線が消失していくような星回り。
仏教語で人間がかかる一切の病気のことを「四百四病」と言いますが、掲句の「四百の牛」も「見渡すかぎりのたくさんの牛」ということでしょう。
ネコでもウサギでもなく牛ですから、もうそれだけで異常事態な訳ですが、それだけの牛がいっせいに見えなくなるほどの「雹(ひょう)」が降ってきては、もはや完全にお手上げでしょう。
「事実は小説より奇なり」とはよく言ったもので、掲句も作者の自註によれば栃木の牧場で起きた実話なのだそうで、事ほど左様に、現実はいつもこちらの想定や常識を不意に超えてきては、それまで自分で引いて窮屈になっていた様々な境界線を掻き消してしまうもの。
おうし座の太陽とやぎ座の土星という、かっちりと現実を固めていくような配置のちょうど真ん中に守護星である海王星が位置してくる今週は、さながら掲句のような予測できないイリュージョンを通してあなたの中の固定観念を大いに書き換え、現実の枠組みそのものを変えていけるかもしれません。
断片的なものの魔力
例えば、「猫のしっぽ」のような存在の切れっぱし。
あるいは、錆びた看板、使いかけのノート、壊れた機械の部品、割れた食器、百科事典の切れはし、レンズのない天体望遠鏡、きちんとした文章になっていないけれどどこか引っかかる単語など。
それ自体では中途半端な、不完全で、些細な、不具の断片。けれど、どこかそこから物語が始まっていきそうな、全体性を欠いた部分。いや、完成された全体性よりもずっとキラキラしている魅力的な神話のかけら。
「そんなもの、いつまで持ってるの、捨てなさい」
「嫌だ!」
予定調和に落ち着いてしまうことを断固拒否するような、強い意志を体現した部分や断片には、こちらの論理を逸脱させるバイブレーションがあります。
今週のあなたもまた、そうした断片的ものがもたらす揺らぎの中に、大きな可能性を見出していくことができるかもしれません。
今週のキーワード
神話のかけら