うお座
未知を拓く
真っ暗で真空で誰もいない
今週のうお座は、「孤絶-角」という言葉のごとし。あるいは、静かにごく当たり前のように重いリミットを外していこうとするような星回り。
20世紀に人類が初めて宇宙へ進出していった当初、それは「まったく人のいない場所の発見」であり、あくまでそこは未知の自然として存在していました。しかし、21世紀を生きる私たちは、身をもって知っている訳では全くないにもかかわらず、宇宙というものをどこかありふれたニュースのパーツの一部として感じとってしまっているところがあるように思います。
その意味で、私たちは「未知」というものが失われた時代を生きており、それはひとりひとりが自分の手で既知の穢れを祓ってくれるような「未知」を取り戻していかねばならないということでもあります。
詩人の岸田将幸は「孤絶-角」という名の詩集の中で、まさに「孤絶-角」というものについて書いており、私はそれがどんなものなのか知りませんでしたが、初めて目にした時、先の文脈と「孤絶」という言葉とを重ね、さらに「角」という表現にこの詩人の覚悟のようなものを感じました。
今週は5日5日におうし座で新月を迎えていきます。そしてそれはあなたににとって、さながら真っ暗な宇宙空間に浮かぶ宇宙飛行士のように、どこかで自分と既知の世界とのつながりを絶ち切って、未知へと自分を浸していくような。そんなタイミングとなっていくでしょう。
星座としての「公式」
「新たな数式を生まねばならない。きっとそれは次の人がぎりぎり踏み外すことのない足場になるはずだ。その数式は彼を沈黙させ、彼はしばらく別のところで生きて行かなければならなかったかもしれない。しかしだ、その別の場所を育んだのはある死者の息づかいの跡であったかもしれない。そうして彼はある死者の跡を引き受けつつ、また別の人を生かしめるために別の場所に立ったのかもしれない。」(「孤絶-角」)
これは詩集の冒頭部の一節ですが、ここで言う「公式」とは、例えば私たち一人ひとりによって「未知」が発見されていったそのプロセスであり、さながら星と星とを結んで作られた無数の星座のようなものと言えるかも知れません。
そしてそれらは、死者から生者へ、そしてまた次の生者へと、何十代何百代にもわたり、膨大な時間をかけて引き継がれていくものであり、そういうものを私たちは孤絶のなかでこそ受けとっていくことができるのではないでしょうか。
今週はあなたもまた自分なりの「公式」を生み出していくための足がかりを見つけていくつもりで、日々を過ごしていきたいところです。
今週のキーワード
死者の息遣い