うお座
未来を予期する
未知をひらく
今週のうお座は、「寒満月こぶしをひらく赤ん坊」(三橋鷹女)という句のごとし。あるいは、既知の領域から脱け出していく予行練習をしていくような星回り。
今週は新月から少しずつ月が膨らんでいくフェーズなので夜空に月は観測できませんが、掲句における「寒満月」はおそらく母親のことであり、「赤ん坊」はみずからの母たる満月と分離していて、すでに一定の距離を保っています。
ただ、それでいて奇妙なほどの静謐さと安心感がここには漂っており、それは「こぶしをひらく」という挙動に垣間見られる生命の意志力の開花において支えられているような印象を受けます。
今週のあなたもまた、そんな「赤ん坊」と重なるような自らの人生への熱い律動を感じていくことができるはず。
古来より、日本人にとって月はあの世のイメージが揺曳する「アナザーワールド」でもありましたが、掲句において「赤ん坊」はそうした母親でありあの世でもあるような月と交信しつつも、そこに絡めとられきることなく、自分自身の心臓の鼓動や生きる実感を確実に感じ始めている。
うお座の人たちにとって、6日(月)の新月から放たれた月が自分の星座を通過していく今週は、これからの半年を生きていく上でのインスピレーションにも恵まれやすいタイミングと言えるでしょう。
助走線としての「なつかしさ」
私たちは時々、ある風景にたいして特別な「なつかしさ」を覚えることがあります。
武蔵野の雑木林が自然主義文学者たちによって再発見されたものであったように、「なつかしさ」というのは自分にとってのアイデンティティーを何か遠く離れたものに重ねていくプロセスの中で生み出され、さらに誰かと共有されることで強調され、タイムマシンのように装置化されていくという側面があるのです。
つまり「なつかしさ」とは、等身大の現実世界から脱却していくための助走線であり、それゆえに「なつかしい場所」は普段目に触れている日常世界には存在せず、時おり不意をつくかたちで私たちの前に見え隠れするのであり、本質的にそこは日常と緊張関係をもつ「対抗空間」なのです。
今週はもし、そんな「なつかしい」景観が目の前に現われたなら、意識から消えてしまう前によく目に焼き付けておくこと。
言葉で記したり、写真を撮っておくのもいいでしょう。それらは得てして、未来への予期を孕んでいるはず。
今週のキーワード
月を眺める