うお座
過激なほどに未成熟であれ
人間と芸術
今週のうお座の星回りは、「老後の初心」という言葉のごとし。あるいは、終わりなき探究の途上として、自分の人生を位置づけていくような星回り。
冒頭の一語は能の大成者である世阿弥の言葉ですが、彼はそれについて「命には終わりあ り、能には果てあるべからず」(『花鏡』)とも述べています。
そう、人生には終わりがある。しかし、新たな事態を乗り越え続けていくことによって、何歳であろうとも、人はいつでも自分の人生を生き直していくことができる。
例えば、年老いて聴覚を失ったベートーヴェンや、視力を失った舞台芸術家の友枝喜久夫などは、まさに「芸術には果てあるべからず」を体現するかのようです。
世阿弥にとって芸術(能)というのは、ひとりの人間の射程をはるか超えるものであり、そうしたはるかな射程の中に改めてひとりの人間を位置づけていくものでもありました。
こうした過激なほど未成熟へ向かう思想こそ、まさにいまのうお座に必要なものであり、高じればそれは必ずや芸や技の研鑽法に限らず。あなたの生き方そのものをスケールアップさせてくれるものとなるでしょう。
さながら赤子に戻ったかのように
そもそも、産まれてくるときの赤ちゃんというのは、どんな感じでこの世に生まれてくるのでしょうか?
おそらく肩を張ってがむしゃらになり過ぎている訳でもなく、かといって子宮に固執して イヤイヤしながら引きこもろうとしている訳でもなく。自分の身に訪れた環境の変化を自然に受け入れつつも、全身でそれに驚いているのではないでしょうか。
より厳密に言えば、赤ちゃんというのは常に、世界や自分の人生に開かれており、その結果として変化や困難を受け入れるための準備ができている。
今週は、しばらくのあいだ、どこか間接的な手段や道具を通して感じていた変化の流れのを、より直接的に肌で感じとっていくことができるかもしれません。
その際、「老後の初心」という言葉は否が応でもあなたの脳裏をよぎるはずです。
今週のキーワード
大器とは生涯にわたり完成を拒み続ける者のこと